『梅切らぬバカ』
監督:和島香太郎
出演:加賀まりこ,塚地武雅,渡辺いっけい,森口瑤子,斎藤汰鷹,
徳井優,広岡由里子,北山雅康,林家正蔵,高島礼子他
109シネマズ箕面にて。
本作のタイトルを入力しようとして、「埋め切らぬバカ」と変換されたときには、
「バカ野郎」と言いたくなりました。その変換はないと思う。(^^;
加賀まりこはなんとこれが54年ぶりの主演なのだそうです。
彼女がデビューしたのは1960(昭和35)年。私はまだこの世に生まれていない。
そんなときから第一線で活躍し続けているって、本当にすごい。
忠男はまもなく50歳で自閉症。父親のことは死んだことにしている。
いずれはひとりで生きていかねばならない息子のためにと、
心配ながらも決断した珠子だったが……。
珠子の隣家を購入して引っ越してきた里村一家。
隣人のことは何も知らずに越してきたから、忠男のふるまいに驚きを隠せません。
特に茂は「なんだあいつは」と怒りまくり。
近所の乗馬クラブの経営者(高島礼子)は、忠男のことを敵視。
馬が大好きで興味を示す忠男のことを冷ややかな目で見つめます。
近所の住民たちは誰も山田母子のことをよく思っていないし、
住宅街の中にグループホームがあると、自分たちの町の価値が下がると主張する。
ホームの前に旗を立てて「出て行け」と訴える姿には背筋が凍る。
そんななか唯一、草太は隣家から道路へ伸びた梅の木に興味を持ち、
梅の実を拾って珠子に差し出す。忠男とも友だちになろうとします。
それが逆に事件を起こすきっかけを作ってしまうとは。
登場人物の中では英子にいちばん共感できそうです。
忠男のことを特別視はしない。でも、伸びた梅の木はなんとかしてほしい(笑)。
夫に呆れながら、子どもにとって大人がどうあるべきかをちゃんと考えている。
夫もそこまで悪い人間ではなくて、素直な心も持っています。
この作品は何も解決はしていません。
でも、里村一家のように、ひとりひとりにわずかでも思いやりの気持ちが芽生えたら、
お互いもっと暮らしやすくなるのかもしれない。
本作や『ONODA 一万夜を越えて』を観て思うのは、
時には酒の力を借りるのも有効だなということ。人間関係を円滑にすることもある。
酒飲みの言い訳かな(笑)。