バイクで役所に出かけた。
その辺のTシャツにジーンズ。
斜めがけにしたバックにはブラシと口紅。
財布とだんなさんに書いてもらったもらってくる書類のメモ。
メイクもソコソコに、メットをかぶる。
最近は止める場所もいろいろとうるさいのでね。
大型バイク駐輪場にとめる。
メットをとり、すんごい頭を整える。
ジャケットも着てては不自然か?
脱いで手に持つことにする。・・・メットを抱え中へ。
横をスーツ姿の女の人が颯爽と通る。
ヒールをカツンカツンいわせながら・・・。
香水のにおい。ばっちりメイク。これでもか、な髪の毛。
ブランドのバック。
・・・・あっ・・・。
だんなさんのレースの後輩だった。
彼は普段はバイク便をしていて、地方選手権なんかで
表彰台に上がったりしてた人だった。
結構男前でスーツなんか着て、パーティーで会うと
ちょっと目立つようなそんな人だった。
そんな彼が辞めたい!と、言ってるんだと聞いた時だった。
スポンサーもなく、自分で地方選手権なんかに出ていてお金も
大変だし、そういうことか・・・。と思ってた。
雨の日、ずぶぬれのカッパ姿でバイクで書類などをオフィスに届ける。
ピカピカのオフィスに濡れて入らないように入り口でカッパをぬぐ。
脇を通り過ぎるスーツ姿のサラリーマン。
メットを脱いで髪を整えオフィスへ。でも長靴。
応対してくれるOL。かわいい・・・と、思っても
排気ガスくさい俺。クビの伸びたトレーナーに会社のジャンパー。
そんな時、自分がとても惨めに思えて耐えられない。
と、言う。
やりたい事や、やらなければならない事がある人は、
必ず、何かを犠牲にして貫かなくてはならない。
みんなと同じように、遊んだりキレイなカッコをしたかったら、
レースなんて、やっていけない。
そう思ったらもう、やっていけないんじゃないの?
自分にも言い聞かせながらそんな事を言ったことがあったなぁ~
ボロボロな感じで窓口に向かう。
スーツ姿のねーさんを横目にそんな事を思い出していた。
もらった書類をねーさんはブランドのバックへ
私は、バックに入りきらないので背中へ
(お腹に入れようと思ったけどライディングポジションに支障をきたすので、
くしゃくしゃになるでしょ、お腹は)
駐車場のおじさんに
「ずいぶん大きいのに乗ってるね~!気をつけて!」
と、声をかけてもらい
まだ、鼻に残る香水の匂いに、
・・いいの。私は私。人は人。・・・
バイクに乗ってしかできない経験もいっぱいしてきたもの。
いろんな事を思い返し、メットの中でニヤニヤ。
きれいに乗ろうと思えば乗れるよな~
でも、もったいない。
バイクに乗る服ってあるんだ。と思っている私。
ところで、
あの彼はその後どうしたんだろうなぁ~
みんな頑張ってたあの頃をまぶしく思うのでした。