月に1度、妹夫婦と一緒に姉を見舞いに施設へ出かける。月曜日は姪っ子のダンナの休日で、ふたりは一緒に先に来ていた。こちらはそれほどではなかったが、向こうは物凄い雨だったからというので、心配して電話をしてくれたが、向かっている途中だった。「もうすぐ着きます」と返事をしたが、確かに雨足は強くなるばかりだった。それでも何とか施設に到着した。
姉は相変わらずだったが、以前より顔色もよく元気そうだった。本当にボケているのか、意外に正常なのか分からない。姪っ子のダンナを見て、「本当に見れば見るほど、いい男だね」と褒めるが、姪っ子の息子たちの話になると「誰?」と聞き直す。姉が私たちの母親は「料理をしなかった」と言うので、「おばあさんがいたし、兄貴の嫁さんがいたので、できなかったんだよ」と私が訂正すると、「そうかねえ」と考え込む。
それでいて、私が、姉はいったい何歳まで生きるのだろうと思って眺めていたら、そんな私を見て、「あんたは目をクルクルさせているね」と私の落ち着きのなさとやるせなさを見抜くように言う。この施設で、姉と同じテーブルで話し相手だった女性が今は別のテーブルにいる。以前は私たちにも話しかけてくれたが、ただニコニコと笑っているだけになってしまった。姪っ子に聞くと、「95歳で、もう話せないみたい」と言う。
エレベーターで一緒になる男性と久しぶりに出会った。早稲田大学からの封書を見せて、「私のように金も無いのに、寄付して欲しいと言うんだから」と話す。「どこもOBが大学を支えていますからね」と言うと、「すっかり耳が聞こえなくなって、歳には勝てんよ」と笑う。カミさんに先立たれてからすっかり年老いた。以前はとてもハムサムで、私を捕まえると時事や政治で意見を言う人だった。なぜか、周りに年寄りばかりが目につくように感じる。