友々素敵

人はなぜ生きるのか。それは生きているから。生きていることは素敵なことなのです。

長良川鵜飼

2018年09月14日 17時08分53秒 | Weblog

 

 長良川鵜飼は1300年余の伝統がある。風折烏帽子に腰蓑姿の鵜匠は、宮内庁式部職鵜匠に任命され世襲である。篝火を燃やして暗い川を漕ぎながら、10羽の鵜を操る漁法は優雅にさえ見える。鵜飼の観光船で隣の男性から話しかけられた。男性は「今、鵜飼は衰退している」と言う。「観光客が岐阜を通り越して、下呂や高山に行ってしまっている」とも嘆く。

 「鵜飼の伝統を維持するためには、観光客にゆっくりと鵜飼の良さを見てもらう演出と、この周りの鵜飼の背景を整備する必要がある」。「私は子どもの頃から何度も鵜飼を見に来ているが、市はもっと真剣に取り組む必要がある」。「鵜匠は宮内庁の職員で世襲だから、給与も身分も保障されているが、観光船を操る船頭さんはこの仕事が好きでなくては出来ない。オフの時は仕事が無いのだから、市の職員として身分保障しないとなり手がいなくなる」。

 鵜飼をこよなく愛するこの男性はさらに、「今はねえ、ユネスコの文化遺産に登録させることで、起死回生を図ろうとしているが、岐阜市を挙げて、市民全体で、長良川鵜飼を盛り上げないとダメだね」と、お酒のせいもあってどんどん饒舌になる。前に座っている女性もそんな男性の演説をニコニコ顔で聞き入っている。お似合いのふたりだが、夫婦ではないような気配がする。

 下船して別れ際に、「今日はありがとうございました」と私が礼を言うと、男性は「また、会いましょう」と言い握手を求めた。女性の方は終始ニコニコ顔で男性を見つめている。男性はわたしと変わらない歳だろうが、女性は50歳になっていないだろう。小柄で色白な目のパッチとした魅力的な女性だ。男性が「何度も鵜飼を見に来ている」と言っていたのに、女性は「初めて見ました」と言う。物語がありそうな雰囲気が漂ってきた。

 暗い川面の向こうは真っ黒な金華山で、その頂にライトアップされた岐阜城が白く見える。ふたりはどこへ行くのだろう。他人のことなど気にしてはならないのに、ふとそんなことを考えてしまった。

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