まだ暑さはあるけれど、爽やかな秋の空に引き出されるように、名古屋市美術館で開催されている『至上の印象派展』を見ようと出かけた。ところが公営駐車場の前には入ろうとする車の長い列ができている。仕方ないと諦め、近くの民営の駐車場を探すと15分200円のところに1台空いていた。車を入れて美術館に向かうが、いつもと様子が違う。
係の男性が「チケットをお持ちでない方は、こちらの列にお並びください」と大声で案内している。ざっと見ても300人近く並んでいる。「今日は特別ですか?」とその男性に話しかけると、「いいえ、このところいつもこんな調子です。コンビニでもチケットは買えますから、まず買ってから来られた方がいいですよ」と教えてくれた。
ルノワールが描いた少女像『イレーヌ嬢』を見たいと思ったが、並んでまでも見る気がしなくて諦めた。展覧会は24日までしかないためか、いやそもそも日本人は印象派が好きだからか、随分と人気がある。キャンバスに油絵の具で描く絵は、印象派によって完成されたと言っていいと思う。技術だけを見れば職人芸といえる古典派の作品の方が優れている。
ルネッサンスを経て、絵画や彫刻、音楽や芝居は作者の主張となり、いわゆる芸術となった。今朝のテレビでも、塩で描く絵が取り上げられていたが、表現方法や材料など他人の思いつかないものに変えなければ人々は驚かなくなった。現代アートの先輩は「絵画は終焉した」と言う。だから逆に写真と全く変わらない超写実な絵画が注目されるのもその裏返しだろう。
係の男性は「午後3時過ぎには空いてきますよ」と親切に言ってくれたが、3時まで待つには時間があり過ぎる。ミリオン座で映画を見て、喫茶店でコーヒーを飲み、頃合いを見計らって美術館を訪れる、若い時ならそんなデートも苦にならないのに、すぐに諦めてしまう。やっぱり歳のせいだろう。