「才能か。罪か」とポスターにあった。中日新聞に連載され、かなり広告されていたから、満員かも知れないと思いながら名古屋市美術館に出かけた。「天才画家の光と闇」の『カラヴァッジョ展』は、平日にも拘わらず会場は来場者で賑わっていた。
名前だけ聞いても知らない人の方が多いだろうこの画家の展覧会に、これだけ多くの人が集まるのはやはり宣伝の効果だろう。それとともに、よく分からない現代アートと違って、写実的な作品は安心して見ていられる効果かも知れない。
見て来た人なら気付くが、カラヴァッジョ自身の作品は数少ない。けれど、同時代の作品や彼の影響を受けた作品を見ると、確かに才能の持ち主だと思う。では罪とは何か、メチャクチャに生きてきたことを問うているのだろう。女優の沢尻エリカさんが凄い俳優だとしても、罪を犯したことから免れないように。
彼の作品は高く評価されたので生活には困らなかった。それなのにか、そのためなのか、飲んで暴れて、挙句に殺傷事件まで犯している。素行の悪さと優れた作品が描けることは反しない。写実性では実に秀でている。花や果物の絵など、実物以上にリアルだ。
「恥ずべき卑劣な男」と言われながら、彼の作風は以後の画家たちに受け継がれていった。光と闇の画家ラ・トゥールを思い出すし、レンブラントもそのひとりかも知れない。カラヴァッジョはそれまでの宗教画を超えた作品を描きたかったとも思う。展覧会は12月15日まで。