ルーフバルコニーには直径が50センチほどの大きな植木鉢が6個ある。南東の隅の鉢にはミカンの木が植えてある。まだ子どもたちが小学生の頃、青虫からサナギになり、やがて蝶になって飛び立っていく様子を見せたくて植えたものだ。けれども子どもたちは余り興味を示さず、青虫やサナギにワクワクしていたのは私だったと知った。
ミカンの木から2メートルほど離れたところに、サンショウの鉢がある。いつも成長する前に枯らしてしまうが、今年はきれいな若葉が出てきた。するとカミさんはベランダから室内へと鉢を移してしまった。ミカンの木に飛んできた蝶が、サンショウの木に卵を産み付けるのを防ぐためだ。いつだったか幼虫に食べ尽くされ、丸坊主になってしまったことがあった。
確かにアゲハチョウの幼虫は大食漢で、ミカンの若葉もよく食べる。2羽のアゲハチョウが飛んできて、ミカンの木の周りでヒラヒラ舞っていたらチャンスで、葉をよく観察すると小さな真珠のような卵を見つけることがある。この春に産み付けられた卵は4・5日で孵化する。初めはあまりにも小さな黒いゴミのように見えるが、すぐに鳥の糞かと思うくらいになる。そして次に緑色の青虫に変わる。
孵化して10日目くらいだろうか、青虫が5センチくらいになると、やがて糸を出して体を固定しサナギになる。そして10日から14日くらいで羽化する。晴れた日の午前中が多い気がするが、室内で育てていた時は夜だった。緑の枝のサナギは緑色だが、植木鉢でサナギになったものは茶色だったから、周りに同化する能力が備わっているようだ。
サナギの殻を脱いでアゲハチョウになって飛び立っていく時はホッとした気持ちになる。私はただ時々、観察していたに過ぎないのに、「無事に次の子を産むんだよ」と声をかけたくなる。こんな地上30メートルの高所にも、不思議なことにアリは来るし、カマキリも来る。サナギに穴が開けられ、食べられてしまうこともある。青虫の時に鳥に食べられてしまうこともあり、卵の全てが蝶になれる訳ではない。蝶になっても生きていられるのは僅か2週間と短い。
「バラをやめて、蝶を観察することにした」と一緒に働いたことのある女性が言っていたが、彼女のバラ園はどうなったのだろう。
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