毎日が遺言

お通夜

 隣の自治会のおばさんで、何度も大病を患い闘病生活をしていた70歳のおばさんが亡くなった。主人も病気の予後で、体調が思わしくなく、今は店を閉めているが、元気なころは食料品一般をあれこれ届けてくれる、田舎のお店だった。ここのおじさんとおばさんには、息子もよく可愛がってもらったものだ。
 ご近所のおば様方を車に乗せて通夜に行った。ちょうど艶式が始まるころに、息子も黒ネクタイを締めてやってきた。白カッターで上着を持たず、鞄を提げてきたが、これも学生らしくて良いだろう。何せ、この後に自主夜間中学に行くのだからと、自転車で式場までやってきたのだった。
 記帳を済ませた息子は私を見つけ、目で合図をし、私とは別の席に案内され、神妙に焼香をして、帰り際に、たまたま彼の近くの席にいた親戚に挨拶をして、それからまた私に目で合図をして出ていった。
 19歳には当たり前の行動だったが、「オトナになってきたんだなぁ」と、ちょっと感慨深かった。
 やや猫背のひょろひょろの身体で、肩に重そうな鞄をかけて出ていく後ろ姿も、なんだかすごく成長したように見えた。
 帰りの車の中でご近所のおば様方が、息子のことを尋ねてくれたので、「これからボランティアに行くので、私とは別に自転車で来たんです」と言うと、しきりに感心してくれた。実際は何を教えるわけでもなく、自主夜中に来る人たちと話しに行ってるだけなのだが、それは黙っておいた。
 幼い息子を愛してくれた人がこの世を去り、愛された息子はオトナになってゆく。
 人の世の移り変わりですなぁ。

コメント一覧

みらパパ
http://yaplog.jp/mirapapa/
> 匿名希望のtani先生
人が死ぬとき、その生き方を振り返つろ、何ともさびしくなることが往々にしてありますね。
いや、そのようにしてさびしさをまといながら、人々の記憶から消えてゆくのが人間らしいのかも知れません。
永遠に語り続けられる一家なんて、どう考えても不自然ですからね。

「第九」のトラックバック、ありがとうございました。いつもスミマセン。
tani
http://blog.livedoor.jp/live05594/
みらパパどの
6.16「あすは敬老の日」を拝見したとき、小生も「第九」についてブログに書いたことがあるのを思い出しました。バックナンバー12月周囲を探していたので、見つからず、今朝やっと探し当てもした。
ご笑覧いただければ…と思ってTBしておきました。
匿名希望
http://blog.livedoor.jp/live05594/
拙宅のご近所で、最近有名俳優(親子でNHK舞台に活躍中)の母堂様が亡くなった。
母堂にはたしか3人か4人の息子たちがいる。それぞれ高学歴の持ち主たちであり、全国各地で活躍した人たちだった。母堂は九十何j歳。独り暮らしで村の小売業(酒、。塩、雑貨)だった。転倒したのが元で、長期間養老施設に入ったままそこで死去された。家が零落状態だったため、話題にすら乏しい葬儀だったようだ。
葬儀には俳優もまさか親だから来るだろう…巷間の噂通りお出でになったそうだが、通夜には孫の俳優が来ただけだったという。
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