毎日が遺言

太鼓

 週に一度、ボランティアで、事情で学齢期に学校に行けなかった人たちや満足に学べなかった人たち、日本に来て定住したものの日本語が分からず困っている人たちなどに、日常会話や日本語の文章などを教えに行ってる。
 「西和自主夜間中学」という。「中学」と名乗っているが、本来の学校とは全然関係がない。会社勤めを定年で退職した人や、主婦や、自営業や、現役のサラリーマンや、もちろん学校の先生や、色んな人たちがボランティアで、マンツーマンで、教えられることを教えている。そういうところに参加している。
 今の私の生徒さんは、難聴であまりよく学べなかった若い男性。感じ練習帳で勉強したり、新聞を読んだり、作文を書いたりしている。
 その生徒さんが、太鼓のアマチュアグループに所属していて、今日、その公演があり、聴きに行った。結成10年を記念しての初の単独公演だった。
 彼は、いわば“2軍”。全6曲の中の1曲だけ、まだイベントに呼ばれるほどの実力でないメンバーでの演奏に参加していた。
 子どものように生真面目で、すぐに失敗を恐れるところのある彼だが、懸命にリズムを合わせながら大太鼓を叩いていた。
 “1軍”の、速いリズムで軽やかに、そして力強く演奏される曲とは違い、子どもから中年までの10数人のメンバーが、練習してきたことを、本当に真っ直ぐに出そうとしていた。
 演奏が終わり、舞台の前に出た彼の顔を見ていると、柄にもなくウルウルしてしまった。
 人が、邪心なく、懸命に何かを為そうとする姿は、本当に美しいものだ。
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