風のように

ゆらり 気ままに 過ごすとき
頭の中は妄想がいっぱい
錯覚の中で生きるのが楽しみ

薑    64/1000

2024-12-21 06:07:33 | 千字から
葉生姜がはじかみと成って届く頃


父は晩年葉生姜にらっきょうやにんにくなどを
ああ切り干し大根も趣味のように作っていた

稲作農家で結構機械好きの父であったが
耕運機や脱穀機の出始めで

父や母の労働はどんなだっただろうか
もちろん我々兄妹も幼い頃から手伝ってはいたが

十数反の一反300坪としておそらく4・5000坪の
水田に這いつくばり草を取り

噴霧器で消毒しその苦労は筆舌に尽くせない
耕運機の以前は牛を懐柔して田を鋤いたので

その牛の世話も簡単ではない365日欠かせない
餌は藁を切ったものに農協で買った飼料を混ぜ

牛小屋には藁を切って敷き詰め糞尿の世話をし
その糞尿は田畑の肥やしとなる

種籾を苗代に撒いて育苗し
手作業で抜いていた苗作りも農協から買い

トラクターが耕した水田に田植え機がうえる
その仕事は兄になり

父はらっきょうや葉しょうがを植え
漬け物にするのが趣味になった

それらを嫁いだ娘達ばかりでなく
甥や姪にも届け定評があった

父はそうして作った野菜や漬け物を
宅急便で送ってくれた

痩せたミニキャロットのような人参の
間引き菜も一つひとつ洗って入れてある

そして箱の隅に新聞に包んで忍ばせてくれたお金
決して入れたよとの文面もない

会席料理にはじかみを見ると
ピリッと辛く歯応えのある父の薑を想う


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