ねえねえ、ママ

お帽子を深々と被った
ママ

ごはんを食べに来た
お店が、お客さんで
溢れているから

『なんで、こんなに混んでいるの？』
『二階席ないの？』


『すみません！お二階はありますか？』
って、店員のお兄さんに聞いてみたけど
忙しくて聴こえないみたい


ママの顔を見上げたけど
お帽子の隙間から
違うことを
考えているみたい

店員のお姉さんが
席を決めてくれたから
座ったよ


『メニューはどこ？』
って、ママが言うから
探したよ


『ママ、はい！』

…

いつもママは
しゃべらないんだ


私が食べたいのは
もう決まっているよ


ママも
そろそろ決まったかな

お帽子の中の
目の動きで分かるよ


『すみませーん！』

って呼んだから、
ママ、さっきのお姉さんが来てくれたよ

『ご注文は？』

『キムチチャーハン』
『あんたはこれでいいよね！半ラーメン』

『うん』って
言ったよ


それになると思って
決めてたから


『ねぇねぇ、ママ』
『昨日ね…』

『ねぇねぇ、ママ』
『今度ね…』

『ねぇねぇ、ママ』
『ゆうちゃんがね…』


『ねぇねぇ、ママ』
『……』


お帽子で
顔が隠れているから


ママの表情は
みんなには
見えないみたいだけど


わたしはね

小さいから

下から
お帽子の中の
ママの顔しか
見えないんだよ


ママの
笑顔が

見たいんだよ