泣崩れる彼。どうして良いか全くわからないと。
彼女には前夫との子供が2人いる。彼女に押されて一緒に住むようになったが、子供たちとどう接して良いかわからない。自分は父親になれない、息が詰まりそうだ。聞き出すとポツリポツリと話してくれたが、それまではストレスと言う一言でくくっていた。
薬物依存とおさらばし、ホームレスからも抜け出した彼。ようやく自分の足で立つようになったばかりのところへ大きな環境の変化。壊れた家庭で育ち、親に捨てられ、大人のロールモデルもなかった環境で育った彼。そんな彼に急に父親になれと言う方がどうにかしている。
ひとつひとつシコリを柔らかくするように会話を続ける。具体的な計画も立てる。直ぐにでも逆戻りしそうな受診前の彼とは少し違う様子で診察室を出て行く姿に、少しの安心を抱く。踏ん張って欲しい。
秋の森