走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

目を光らせて

2015年04月12日 | 仕事
ハイドロモルヒネ(HM)を処方して欲しいと電気稼働の車椅子に乗ったピーターがホームレスのシェルターのクリニックを来診した。最後に処方してもらったHMを盗まれた。警察にも通報した。慢性腰痛で26年間服用している、ないと困ると。

HMは強度の麻薬。慢性腰痛には使わない。

初診には詳しい問診と診察で1時間かかります。多分その後にHMを処方する可能性はかなり低い、いや多分ゼロだから時間を無駄にしたくなければ、どうぞお帰りください、とキッパリ。

それでもプライマリーケアプロバイダーがいないから受診しますとピーターは言う。

問診中もやたらに言い訳が多いピーター、、、怪しい。しかし右足の筋力も感覚も低下しているのは確かでいろいろな検査や専門医への紹介は必要そう。

全部を終え、じゃあ話してくれた内容が事実かどうか処方箋歴を調べますからね、と連絡。ピーターが説明したものと違う。それにHMの他にT3も他の医師から最近処方してもらっている。こうなると、さらにいろいろな言い訳を加えてくる。どうして本当のことを話してくれないんですか?そういうことをされるとあなたは処方薬を悪用していると疑いが非常に高くなります。さらに言い訳をだらだら、、、、。他に事実と違うことを話しましたか?

ないと言う。

じゃあ次は警察に連絡しますね。あなたが本当に届け出をしたか。顔色を変え言い訳をするピーター。

ああ~どうして医療者を騙そうとするのよ、、、

こういう初診だと残念ですがあなたを信用することはできませんから、処方をするなら1日分ずつ処方するデイリーディスペンスに承諾してもらわなければなりません。それができないなら、どうぞお帰りください。

ピーターはぶっちぎれた。大声をあげて怒鳴り散らす。絶対承諾しないと。

じゃあ私の答えも決まっている。処方はしませんからお帰りくださいとドアを開ける。車椅子ごと体当たりされたらどうしようとパニックボタンを握っていた。彼の大声にスタッフ2人が駆けつけてくれた。ピーターは退室。

私をなめんなよ!

こういう患者がこの二日間で3人も来た。こういう診察には沢山の労力を費やす。だからやらない医療者が多い。処方薬の悪用は続く。あー疲れた。

追伸。
その夜シェルターから追い出された(ルールを守らなかった)ピーターはその足で救急室へ行った。運良くT3の処方をもらったようだが、運悪く調剤する薬剤師が私が処方箋歴をリクエストした薬剤師だった。私はコンサルトされこの薬剤師は処方した医師に連絡を入れた。多分彼の処方はキャンセルされたでしょう。薬剤師、処方箋を出す医師、NPが目を光らせれば防げる処方箋薬の悪用。大切です。



なめ猫、流行りましたねー80年代ですよ。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。