走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

良薬か毒か

2016年03月11日 | 仕事
昨日は一日中勉強会。今更ながら考えさせられる1日だった。

Therapeutic Initiative (TI) と言うところから来た講師。TIのセッションには学生の頃から参加していた。ポッドキャストも良く聞いていた。そう、過去形。久しぶりだった。

で、このTIは医療の常識を徹底的に分析して行く集団。医師や薬剤師が中心だ。様々な研究を検証し、何処にエビデンスがあるのか?ガイドラインはエビデンスに基づいて作られたのか?とか。



写真はサロゲートマーカー(指標)、例えば血液検査値が改善することと、薬の内服によるリスクは果たして比例するかの問いかけだ。

簡単な例で言うと、糖尿病の指標によく使われるヘモグロビンA1c。これが高いからと糖尿病の薬を開始する。色々種類があるがひとつを除き他すべてに、A1cは下がるが低血糖による死亡のリスクが高くなるリスクが伴う。

学校でそう教わったからは言い訳にならない。

1日の最後に見たビデオはショッキングだった。コレステロールを下げる薬によって筋肉痛でほぼ動けなくなってしまった高齢者。心筋梗塞を起こしたからと医師は中止を渋った。しかしこの患者本人も元医師。明日死ぬかもしれない高齢者なんだからと自分の意思で服用を中止した。彼は今94歳。毎日水泳、ハイキングを楽しむまでに回復した。彼の生き生きとした話しぶり、泳ぎっぷりからわかるように、良かれと思って処方した薬が毒となっている時もあるのだ。

処方しっぱなしではいけない、その効果の評価を忘れてはいけない。そして処方をする前にインフォームド コンセントが不可欠であることを改めて認識させられた1日だった。


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2 コメント

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こんにちは (のびた)
2016-03-12 11:10:18
投与された薬が効果を発揮してくれれば助かりますが 反面のリスクも背負うとなると どこまで信用していいか分かりません
現在は 薬の投与が多いらしいですね
たまに薬をいっぱい飲んでいる方がおります
副作用が心配無ければ良いですが・・・
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のびたさんへ (美加)
2016-03-13 05:03:40
薬はどんなに研究されていても大勢の人に使用した平均的な値しか出てこない。個人個人の反応はあくまで個人差があるということを忘れてはいけないのです。医療者は悪気があって処方をしているのではありません。しかし評価を怠っていることに注目が集まってきていることを伝えたかったのです。そして鵜呑みにせず医療者とよく話し合う事も大切です。
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