今日、東京管区気象台はサクラ(ソメイヨシノ)の開花を発表した。平年より5日早く、昨年より2日早い観測だそうだ。サクラの開花日は、標本木で5~6輪の花が咲いた状態となった最初の日を言うらしく、標本木のある靖国神社で、気象庁の担当官が8輪の花が開いたのを確認し開花宣言するニュース映像を見た。「お待たせしました。桜の開花です」・・・こんな儀式があったとは知らなかった。
子供の頃は何とも思わなかったのに、日本人にとってサクラは格別だと見直したのは、ほんの10年ほど前のことだ。当時、ほぼ赤道直下の常夏の国・マレーシアに暮らして、南国の花は原色鮮やかで、南国の果物は甘みが強烈で、いずれも刺激が強いのが物珍しかったが、一年経ち二年経つと、却って物足りなくなり、咲き誇ってなお淡いサクラの花の色や、控えめな桃や柿の淡い味わいが、なんとも奥床しく無償に懐かしくなったのだった。
そして、その頃、吉田満著「戦艦大和の最期」を読んで、死地に赴くべく出発した戦艦大和が、離れ行く祖国の地に咲き誇るサクラを遠く望む場面で、乗組員が先を競って双眼鏡を手に取り、見納めになるであろうサクラを見やる健気な姿が、不覚にも涙を誘ったのであった。彼らが瞼に焼き付けようとしたのは、もはや現に見るサクラではなく子供の頃に見た故郷のサクラだったかも知れない。そして、咲き始めの可憐さと、咲き誇る華麗さと、散り際の潔さの美学に、自らの人生を重ね合わせようとしたかも知れない。
サクラは、咲き始めてから1週間程度で満開を迎えると言われる。今週後半は寒の戻りがあるが、週末から来週にかけて、花見が楽しめそうだ。これで見納めというわけでもないのに、風に舞うサクラの花びらには、心が千々に乱れてしまう。なんと罪深い花か。
子供の頃は何とも思わなかったのに、日本人にとってサクラは格別だと見直したのは、ほんの10年ほど前のことだ。当時、ほぼ赤道直下の常夏の国・マレーシアに暮らして、南国の花は原色鮮やかで、南国の果物は甘みが強烈で、いずれも刺激が強いのが物珍しかったが、一年経ち二年経つと、却って物足りなくなり、咲き誇ってなお淡いサクラの花の色や、控えめな桃や柿の淡い味わいが、なんとも奥床しく無償に懐かしくなったのだった。
そして、その頃、吉田満著「戦艦大和の最期」を読んで、死地に赴くべく出発した戦艦大和が、離れ行く祖国の地に咲き誇るサクラを遠く望む場面で、乗組員が先を競って双眼鏡を手に取り、見納めになるであろうサクラを見やる健気な姿が、不覚にも涙を誘ったのであった。彼らが瞼に焼き付けようとしたのは、もはや現に見るサクラではなく子供の頃に見た故郷のサクラだったかも知れない。そして、咲き始めの可憐さと、咲き誇る華麗さと、散り際の潔さの美学に、自らの人生を重ね合わせようとしたかも知れない。
サクラは、咲き始めてから1週間程度で満開を迎えると言われる。今週後半は寒の戻りがあるが、週末から来週にかけて、花見が楽しめそうだ。これで見納めというわけでもないのに、風に舞うサクラの花びらには、心が千々に乱れてしまう。なんと罪深い花か。