風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

サクラ咲く・続

2016-03-23 00:27:41 | 日々の生活
 もうちょっとサクラのネタを。
 一週間ほど前の日経夕刊コラムに、宇宙飛行士の山崎直子さんが、4月初旬に宇宙に行ったため、宇宙でもお花見が出来たらと、花びらを塩漬けにした「桜茶」を持って行き、宇宙船の中で浮いた水の球の中に入れて、水中花を作った、などと風流なことを書いておられた。そして、海外の仲間にお花見や桜の開花予想習慣について話すと、まさに、風流だねと驚かれたと書いておられた。桜前線などの造語は、日本人ならではだろうし、春一番や木枯らしが吹くといった、季節の移ろいにこれほど敏感な民族は、世界広しと言えどなかなかいないだろうと思う。
 ボストンにいた頃、戦後のブレトン・ウッズ体制を生んだ会議が開かれたニューハンプシャー州北部のマウント・ワシントン・ホテルが建つあたり、所謂ホワイト・マウンテンズ(ホワイト山地)は、紅葉がきれいなことで有名で、実際に行ったことがあるが、その季節になると人が集まると言っても、アメリカのような閑散とした大陸国で集まるのだから、たかが知れている。シドニーにいた頃、春(11月頃)になると、ジャカランダが明るい紫の花を咲かせて、目を惹いたが、これも人々が開花予想をするところまで行くわけではなく、せいぜい咲き始めて、ああそういう季節になったか、と事後的になぞる程度だ。
 ところがジャーナリスト(中国ウォッチャー)の中島恵さんが今日の読売新聞(Web版)に「なぜ中国人は日本で花見をしてみたいのか?」というタイトルのコラムを寄せている。中国には桜の開花予測というものは存在しない、日本独自のものだと断りつつ、春浅き日から開花予測をチェックする中国人がおり、その中国人に言わせれば、中国人にとっての日本のイメージの第一は桜、次いで富士山、そして温泉、さらにラーメンと続くらしい。なんとなく納得させられる。要は中国で見られる日本関係の印刷物などで、イメージ写真によく使われるのが桜と富士山で、定番中の定番であり、定番の日本を体験してみたい、桜をバックにたくさん写真を撮って友達に自慢したい、ということのようだ。
 言わば、初めてパリに行って、エッフェル塔や凱旋門やシャンゼリゼ通りを訪れない日本人はいないのと同じ、あるいは初めてニューヨークに行って、自由の女神やマンハッタンの摩天楼を訪れない日本人もいないのと同じ、と言うのは言い過ぎであろうか(まあ、桜の方が、文化的で多少は高度な趣味かも知れないが)。中国人には、日本の田園風景も美しくて感動に値するものだと聞いたことがある。実際、中島恵さんによると、同じ桜の木とは言え、日本と中国では周囲の風景が大きく異なり、中国の桜は土壌や気候によるのか、枝ぶりが大きく育つことが多く、日本のように顔の間近まで枝がはうようなシチュエーションは少ないらしく、日本の桜とは趣が異なるそうだ。日本というハイ・クォリティの国の文化的な憧れ・・・つまり今はまだ希少価値があるに過ぎないと言ってしまえば身も蓋もないが、今は中国人の中でも裕福な部類の人たちが日本を訪れているわけで、庶民レベルまで桜を愛でる日本人のようなことが、今後も中国人の間で続くとはやはり思えないのである。
 日本人は、風や波によってユーラシア大陸から隔絶された日本列島に住むガラパゴス種・・・なのかも。
コメント
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