イランのロウハニ大統領が、マレーシアで開催されたイスラム諸国の国際会議に出席したついでに日本に立ち寄り、安倍首相と会談した。振り返れば、5月末のサミット直前にイラン外相が急遽来日して河野外相(当時)と会い、それを受けて安倍首相が翌月にイランを訪問し、ハメネイ師からも厚遇された。9月にはニューヨークで再びロウハニ大統領と会っているので、この半年で三度目になる。
かねてイランの経済低迷が伝えられてきた。国庫収入の7割以上を原油・天然ガスや石油化学製品の売却益が占めるイランにとって、基軸通貨ドル取引の停止というアメリカの伝家の宝刀とも言える経済制裁は、厳しい。余談になるが、そこが同じ核問題で対立しながら国際社会にさほど組み込まれていない極貧国・北朝鮮との違いでもあろう(と言っても、北朝鮮も制裁による影響で疲弊しているのは事実のようだが)。先月には、ガソリンへの補助金カットを機に反政府デモが国内全土に拡大し、機銃掃射などで1000人以上が殺害された可能性があるとされ、ロイター通信は「革命体制の過去40年で最大」の抵抗運動だった可能性があると伝えた。核合意(JCPOA)の当事国である英・仏・独すら手を拱いており、イランとしては藁をもすがる思いで、再び日本の仲介を求めたのだろう。
ロイターによれば、安倍首相が日本の船舶保護に向け中東に海上自衛隊を派遣する計画を伝えたのに対し、ロウハニ大統領は理解を示し、安倍首相はまた2015年の核合意の履行を求めたほか、中東の安定化のためにできる限りのことをすると述べたのに対し、ロウハニ大統領は、核合意を維持できるよう日本などに協力を求めるとしたらしい。
それにしても、日本の首相がなかなか微妙な橋渡し役を引き受けたものだと感心する。かつてなら考えられなかったことだ。これも、オバマ前大統領による核合意(JCPOA)のレガシーを否定し、有権者の28%を占めるキリスト教福音派に露骨に阿るトランプ大統領という異能が登場した因果であろうか。そのトランプ大統領の懐に飛び込めるのは世界広しと言えども安倍首相を措いて他になく、また日本はキリスト教国の欧米とは異なる親密な眼差しをイスラム諸国から向けられ、イランとも伝統的に良好な関係にある。イランはイスラエルとも、またアラブの盟主・サウジとも対立しており、イランが核能力を獲得すれば、サウジはパキスタンとの合意により核技術を入手することになっていると伝えられ、中東での核ドミノが懸念される。さりとて選挙モードに入りつつあるトランプ大統領に妥協の余地は乏しいだろう。イランを巡り、せめてこれ以上後退しないような展開を期待したい。
かねてイランの経済低迷が伝えられてきた。国庫収入の7割以上を原油・天然ガスや石油化学製品の売却益が占めるイランにとって、基軸通貨ドル取引の停止というアメリカの伝家の宝刀とも言える経済制裁は、厳しい。余談になるが、そこが同じ核問題で対立しながら国際社会にさほど組み込まれていない極貧国・北朝鮮との違いでもあろう(と言っても、北朝鮮も制裁による影響で疲弊しているのは事実のようだが)。先月には、ガソリンへの補助金カットを機に反政府デモが国内全土に拡大し、機銃掃射などで1000人以上が殺害された可能性があるとされ、ロイター通信は「革命体制の過去40年で最大」の抵抗運動だった可能性があると伝えた。核合意(JCPOA)の当事国である英・仏・独すら手を拱いており、イランとしては藁をもすがる思いで、再び日本の仲介を求めたのだろう。
ロイターによれば、安倍首相が日本の船舶保護に向け中東に海上自衛隊を派遣する計画を伝えたのに対し、ロウハニ大統領は理解を示し、安倍首相はまた2015年の核合意の履行を求めたほか、中東の安定化のためにできる限りのことをすると述べたのに対し、ロウハニ大統領は、核合意を維持できるよう日本などに協力を求めるとしたらしい。
それにしても、日本の首相がなかなか微妙な橋渡し役を引き受けたものだと感心する。かつてなら考えられなかったことだ。これも、オバマ前大統領による核合意(JCPOA)のレガシーを否定し、有権者の28%を占めるキリスト教福音派に露骨に阿るトランプ大統領という異能が登場した因果であろうか。そのトランプ大統領の懐に飛び込めるのは世界広しと言えども安倍首相を措いて他になく、また日本はキリスト教国の欧米とは異なる親密な眼差しをイスラム諸国から向けられ、イランとも伝統的に良好な関係にある。イランはイスラエルとも、またアラブの盟主・サウジとも対立しており、イランが核能力を獲得すれば、サウジはパキスタンとの合意により核技術を入手することになっていると伝えられ、中東での核ドミノが懸念される。さりとて選挙モードに入りつつあるトランプ大統領に妥協の余地は乏しいだろう。イランを巡り、せめてこれ以上後退しないような展開を期待したい。