風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

ミレイユ・ダルク

2017-08-29 02:00:28 | スポーツ・芸能好き
 フランスの女優ミレイユ・ダルクさんがパリの自宅で亡くなったという。享年79。
 私は何故か中学二年の頃から突然、洋画に目覚め、と言っても劇場に通うほどの金銭的余裕はなく、毎月なけなしの小遣いは「スクリーン」という月刊誌に消えるので、TVで放映された映画を観るしかなく、好きが昂じて中学三年のときには受験勉強中にもかかわらず「水曜ロードショー」や「ゴールデン洋画劇場」など年間50本以上観た記憶がある(ということは毎週一本観ていた)。よく親は黙って許してくれたもので、志望校に合格できてなにより、である。のどかな時代だった。
 当時は今ほどハリウッド映画一辺倒ではなく、1960年代から70年代にかけてフランス映画の名作も多く、アニュイな雰囲気と情感たっぷりの映画音楽が子供心にも不思議と気に入っていた。さすがにブリジット・バルドーの時代ではなく、またソフィー・マルソーやジャン・レノが出てくる以前のことで、辛うじてカトリーヌ・ドヌーヴや、イザベル・アジャーニ、マリー・ラフォレ、アニセー・アルヴィナなどのいい感じの女優さんがいたし、男優でも、アラン・ドロンはもとより、ジャン=ポール・ベルモンドやジャン・ギャバンなどの渋~い方がいた。
 では、ミレイユ・ダルクのファンだったのかと言うと、実は彼女の映画は一本も見ていない。それにもかかわらず、美女と言うよりボーイッシュな感じの、美人というより可愛いタイプの女優さんとして印象に残っているのは、ひとえに、アラン・ドロンが、ロミー・シュナイダー、続いてナタリー・バルテルミー(後のナタリー・ドロン)との破局のあとに、愛人関係にあったからだ。アラン・ドロンと言えば、最近で言えばトム・クルーズやジョニーデップやレオナルド・ディカプリオやブラッド・ピットやジョージ・クルーニーなんて目じゃないくらいの人気者で、当時の世のおばさまたちを虜にした。如何にもベタな二枚目なのだが、生い立ちが不幸で、「太陽がいっぱい」や「地下室のメロディ」のような陰のあるちょいワルの役柄がよく似合う。
 後にコケティッシュという言葉を覚えたとき、何故かミレイユ・ダルクのことだと思い込み、パリジャンと言えばカトリーヌ・ドヌーヴ(のような正統派美人)ではなくミレイユ・ダルク(のような小悪魔的美女)をイメージするようになって、今に至る。映画を一本も観ないで、これほど強烈な印象を残しているのは、アラン・ドロンの存在感の故か、はたまた出会ったのがお年頃だったせいか・・・私にとってあの時代の輝きを身にまとった方が故人となられて、ついメランコリックになってしまったのだった。謹んでご冥福をお祈りしつつ、合掌。
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