ブックオフという業態はすっかり定着し、最近は扱われる本は中古でありながら新品同様で、びっくりします。供給が増えて品質があがっているのでしょうが、なるべく綺麗なままで売ろうとする人々の配慮も感じられます。「もったいない」と資源を粗末にしない日本人の心情にもマッチして、本を手にする機会(売れる本の数)は確実に広がり(多分)、消費者の利便性は高まっています(多分)。でも出版業界全体の売上金額が増えているかどうかは知りません(消費者の財布は限られていますから・・・かつてより通信費やネットに使う金が増えているでしょうね)。
そんなブックオフの中には、(廃業した?)古本屋さんから引き取ったと思しき本を「古書」と表示して、店の片隅で扱っているところがあります。最近の本は言わば「古典」の応用編に過ぎませんから、原典に当たった方が文脈が分かって理解が深まりますし、オリジナルの解釈が大事なこともあります。「古書」は、一種の生き物のように、出版された当時の空気を纏っているかのような独特の雰囲気があり、古本屋にせよ、「古書」コーナーにせよ、眺めているだけでも幸せな気分になります。
先日、そんなブックオフの「古書」の書棚で、ピエール・ルヴェルディの詩集(1969年刊 思潮社)を見つけて衝動買いしました。Wikipediaでは「キュビスムの理論家として特に散文詩に優れ、イメージの自由な構成によって、夢幻的・超現実的な詩的宇宙を創り出し、シュールレアリスムの先駆者となる」と紹介されているフランスの詩人です。しかし、今日、言いたいのはこの本のことではなく、栞のように挟まっていた一枚のハガキのことです。
7円ハガキですから相当古い。シミはありませんが全体が黄ばんで、昭和45年1月30日付の消印がありました。文京区「せりか書房」宛で、差出人は大和市「唐木順三」とあります(因みに住所は番地まできっちり書き込まれていました)。文面は「此度は貴社発行の『言語と沈黙』上巻をご恵与下され、ありがたく御礼申します。小生の関心のあるテーマですので、後日拝読するつもりでゐます。」と簡単なもの。内容から判断しても、評論家の唐木順三氏でしょうか。
調べて見ると、「せりか書房」(1967年設立)は住所を移していますが、「とりわけ哲学・宗教・思想といった人文系の専門書を数多く出版」(Wikipedia)する会社で、文芸批評家ジョージ・スタイナーの記念碑的著作「言語と沈黙」の復刻版が2001年に出版されており、アマゾンでも、同社1969年刊が「古書」として検索されました。この「言語と沈黙」の出版時期、唐木順三氏からの礼状の日付、そしてこの礼状が挟まっていた本(詩集)の出版時期、のタイミングはいずれも符合します。あとは唐木順三氏が「せりか書房」から本を出しているとか同社の雑誌(があるとすれば)に寄稿している等の何らかの関係が見つかれば決定的なのですが、そこまでには至りませんでした。唐木順三氏の書籍の出版はほぼ全て筑摩書房が独占していると言ってもよい状態で、「せりか書房」が執筆を依頼していたのかも・・・ただの憶測です。いずれにしても、私が買った「古書」の詩集は、もともと「せりか書房」の編集者(あるいはその関係者)が購入し、礼状を挟んだまま、いつか古本屋に流れ、40数年の時を経て、偶然、私の手元に来た・・・たった一枚のハガキからこんな物語を想像するのもまた「古書」の楽しみの一つであり、縁を感じます。
そんなブックオフの中には、(廃業した?)古本屋さんから引き取ったと思しき本を「古書」と表示して、店の片隅で扱っているところがあります。最近の本は言わば「古典」の応用編に過ぎませんから、原典に当たった方が文脈が分かって理解が深まりますし、オリジナルの解釈が大事なこともあります。「古書」は、一種の生き物のように、出版された当時の空気を纏っているかのような独特の雰囲気があり、古本屋にせよ、「古書」コーナーにせよ、眺めているだけでも幸せな気分になります。
先日、そんなブックオフの「古書」の書棚で、ピエール・ルヴェルディの詩集(1969年刊 思潮社)を見つけて衝動買いしました。Wikipediaでは「キュビスムの理論家として特に散文詩に優れ、イメージの自由な構成によって、夢幻的・超現実的な詩的宇宙を創り出し、シュールレアリスムの先駆者となる」と紹介されているフランスの詩人です。しかし、今日、言いたいのはこの本のことではなく、栞のように挟まっていた一枚のハガキのことです。
7円ハガキですから相当古い。シミはありませんが全体が黄ばんで、昭和45年1月30日付の消印がありました。文京区「せりか書房」宛で、差出人は大和市「唐木順三」とあります(因みに住所は番地まできっちり書き込まれていました)。文面は「此度は貴社発行の『言語と沈黙』上巻をご恵与下され、ありがたく御礼申します。小生の関心のあるテーマですので、後日拝読するつもりでゐます。」と簡単なもの。内容から判断しても、評論家の唐木順三氏でしょうか。
調べて見ると、「せりか書房」(1967年設立)は住所を移していますが、「とりわけ哲学・宗教・思想といった人文系の専門書を数多く出版」(Wikipedia)する会社で、文芸批評家ジョージ・スタイナーの記念碑的著作「言語と沈黙」の復刻版が2001年に出版されており、アマゾンでも、同社1969年刊が「古書」として検索されました。この「言語と沈黙」の出版時期、唐木順三氏からの礼状の日付、そしてこの礼状が挟まっていた本(詩集)の出版時期、のタイミングはいずれも符合します。あとは唐木順三氏が「せりか書房」から本を出しているとか同社の雑誌(があるとすれば)に寄稿している等の何らかの関係が見つかれば決定的なのですが、そこまでには至りませんでした。唐木順三氏の書籍の出版はほぼ全て筑摩書房が独占していると言ってもよい状態で、「せりか書房」が執筆を依頼していたのかも・・・ただの憶測です。いずれにしても、私が買った「古書」の詩集は、もともと「せりか書房」の編集者(あるいはその関係者)が購入し、礼状を挟んだまま、いつか古本屋に流れ、40数年の時を経て、偶然、私の手元に来た・・・たった一枚のハガキからこんな物語を想像するのもまた「古書」の楽しみの一つであり、縁を感じます。
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