コロナ禍で各国が忙殺される中、いち早く抜け出たとされる中国は、公船の尖閣諸島海域への侵入を常態化してきた。この2月には、日本の海上保安庁に相当する(と言われるが実際には武装警察傘下で事実上は準軍事組織である)海警局に武器使用の権限を付与する「海警法」を施行し、実際に武器を搭載した公船を尖閣海域に侵入させた。中国は明らかに脅威のステージを上げている。
このあたりを察したのであろう、米国防総省の報道官は数日前の記者会見で、中国に対し海警局の公船による尖閣諸島周辺の日本領海への侵入を止めるよう求め、「誤算を生じさせ、物理的な損害をもたらす恐れがある」と批判した(24日付、共同通信)。エスカレーションを本気で懸念し始めている証拠であろう。なお、このとき、記者からの質問に答える形だったとは言え「米国は尖閣における日本の主権を支持する」と、これまでの「施政権」に代えて初めて日本の「領有権」を認める発言をした。一歩踏み込んだものと注目したが、今しがたの日経ニュースによると、「日本の主権を支持する」発言を修正し、あくまで尖閣の領有権について特定の立場をとらないとしてきた従来の見解を踏襲すると表明した。な~んだ。
日本政府は、日米安保条約第5条適用に満足せず(何しろアメリカにおいてdue processを経ることが前提であり、NYタイムズなどのリベラル派が無人の岩じゃないかと揶揄する島を守るために米軍が果たして血を流すのか?疑念は晴れない)、また中国に対して口頭で「遺憾」を示すばかりではなく、何等かの行動を示して領有権を主張することが期待されるのだが、これまでのところは中国に配慮して及び腰だ。この点に関して、元航空自衛官の宮田敦司氏が、「1978年に青嵐会議員が資金を調達し、関西の大学の冒険部の学生を核にした有志を派遣して魚釣島に手製の灯台を建設したことから始まる」という魚釣島灯台のその後の経緯を綴られており、興味深い(24日付プレジデント誌「石原慎太郎氏らが建てた『尖閣諸島の灯台』を、いまこそ強化すべきだ」)。現在、使われているのは、1988年に日本青年社が建設10周年記念として新調したもので、皮肉なことに、中国漁船や台湾漁船もこの灯台による恩恵を受けている、とある。また、灯台などの航路標識は、設置に伴って航路標識許可申請が必要だが、海上保安庁からいろいろ難癖をつけられて却下され、日本青年社から所有権の譲渡を受けていた石垣市の漁業船主協会長も所有権を放棄したことから、仕方なしに国庫帰属財産として国の管理下に置かれることになった数奇な顛末も語られる。なんだか情けない話だ。
「海警法」の問題は既に多くの議論がなされているが、最大の(トリッキーな)ポイントは海警局という準軍事組織が「中国の管轄下にある海域」を対象とすることだろう。九段線も尖閣も当然のことながら含まれる。そこで海警局の公船の動きが法執行なのか武力行使なのかが問われることになるが、仮に仲裁裁判所などから法執行ではなく武力行使と認められ、国際的な非難を浴びたとしても、中国は、かつて南シナ海の九段線に法的根拠がないとする仲裁裁判所の判決を紙屑扱いしたように、歯牙にもかけないことだろう。あるいは香港の国家安全維持法の如く、国際合意を破っても悪びれることはないだろう。もはや中国は自らルール形成できるパワーがあることを見せつけ、自己満足に浸っている。危険な兆候である。
「逆さ地図」によって中国側から南東方面を眺めれば、第一列島線と言われる日本列島・台湾・フィリピン群島によって、中国は太平洋への出入りを塞がれた形になる。台湾や尖閣は、言わばその風穴を開けるものとして期待されるわけだ。折しも台湾では、香港の一国二制度が破綻したのを見て、蔡英文総統への支持が高まり、中国は平和的統一が叶わないとみて、武力統一も辞さない構えである。南シナ海をほぼ手中にした中国にとって、次のターゲットは台湾と尖閣になる。台湾と尖閣は連動する。来年、北京オリンピックを控えて、今すぐに過激な行動に移ることはないと思われるが、今や米中「新冷戦」の時代の最もホットなスポットであり、日本の覚悟が問われる。
このあたりを察したのであろう、米国防総省の報道官は数日前の記者会見で、中国に対し海警局の公船による尖閣諸島周辺の日本領海への侵入を止めるよう求め、「誤算を生じさせ、物理的な損害をもたらす恐れがある」と批判した(24日付、共同通信)。エスカレーションを本気で懸念し始めている証拠であろう。なお、このとき、記者からの質問に答える形だったとは言え「米国は尖閣における日本の主権を支持する」と、これまでの「施政権」に代えて初めて日本の「領有権」を認める発言をした。一歩踏み込んだものと注目したが、今しがたの日経ニュースによると、「日本の主権を支持する」発言を修正し、あくまで尖閣の領有権について特定の立場をとらないとしてきた従来の見解を踏襲すると表明した。な~んだ。
日本政府は、日米安保条約第5条適用に満足せず(何しろアメリカにおいてdue processを経ることが前提であり、NYタイムズなどのリベラル派が無人の岩じゃないかと揶揄する島を守るために米軍が果たして血を流すのか?疑念は晴れない)、また中国に対して口頭で「遺憾」を示すばかりではなく、何等かの行動を示して領有権を主張することが期待されるのだが、これまでのところは中国に配慮して及び腰だ。この点に関して、元航空自衛官の宮田敦司氏が、「1978年に青嵐会議員が資金を調達し、関西の大学の冒険部の学生を核にした有志を派遣して魚釣島に手製の灯台を建設したことから始まる」という魚釣島灯台のその後の経緯を綴られており、興味深い(24日付プレジデント誌「石原慎太郎氏らが建てた『尖閣諸島の灯台』を、いまこそ強化すべきだ」)。現在、使われているのは、1988年に日本青年社が建設10周年記念として新調したもので、皮肉なことに、中国漁船や台湾漁船もこの灯台による恩恵を受けている、とある。また、灯台などの航路標識は、設置に伴って航路標識許可申請が必要だが、海上保安庁からいろいろ難癖をつけられて却下され、日本青年社から所有権の譲渡を受けていた石垣市の漁業船主協会長も所有権を放棄したことから、仕方なしに国庫帰属財産として国の管理下に置かれることになった数奇な顛末も語られる。なんだか情けない話だ。
「海警法」の問題は既に多くの議論がなされているが、最大の(トリッキーな)ポイントは海警局という準軍事組織が「中国の管轄下にある海域」を対象とすることだろう。九段線も尖閣も当然のことながら含まれる。そこで海警局の公船の動きが法執行なのか武力行使なのかが問われることになるが、仮に仲裁裁判所などから法執行ではなく武力行使と認められ、国際的な非難を浴びたとしても、中国は、かつて南シナ海の九段線に法的根拠がないとする仲裁裁判所の判決を紙屑扱いしたように、歯牙にもかけないことだろう。あるいは香港の国家安全維持法の如く、国際合意を破っても悪びれることはないだろう。もはや中国は自らルール形成できるパワーがあることを見せつけ、自己満足に浸っている。危険な兆候である。
「逆さ地図」によって中国側から南東方面を眺めれば、第一列島線と言われる日本列島・台湾・フィリピン群島によって、中国は太平洋への出入りを塞がれた形になる。台湾や尖閣は、言わばその風穴を開けるものとして期待されるわけだ。折しも台湾では、香港の一国二制度が破綻したのを見て、蔡英文総統への支持が高まり、中国は平和的統一が叶わないとみて、武力統一も辞さない構えである。南シナ海をほぼ手中にした中国にとって、次のターゲットは台湾と尖閣になる。台湾と尖閣は連動する。来年、北京オリンピックを控えて、今すぐに過激な行動に移ることはないと思われるが、今や米中「新冷戦」の時代の最もホットなスポットであり、日本の覚悟が問われる。