“Seven Stars in Kyushu” cruise train.
…ようやく、見ることが出来ました。
クルーズトレイン 「ななつ星 in 九州」を熊本県内で、明るい日中の時間帯に間近でじっくりと見ることが出来る唯一の場所。
それが、乗客が「ななつ星」の旅の最終日の朝食をとる会場となるレストラン“火星” があるJR豊肥本線の阿蘇駅。
乗客たちが爽やかな阿蘇高原の風景を満喫しながらゆっくりと朝食と朝の散歩を楽しめるように、「ななつ星」は阿蘇駅に早朝から数時間停車。この間、乗客以外の人たちも「ななつ星」の車体を線路越しに隣のプラットホーム上から見ることが出来ます。
僕も、「ななつ星」運行開始から1ヶ月目にしてようやく、心ゆくまで「ななつ星」の美しい車体を堪能する事が出来ました。
さぁ、皆さんも是非御覧下さい。これがクルーズトレイン 「ななつ星 in 九州」です!
朝7時少し前、熊本駅からの始発の普通列車が阿蘇駅に到着。
既に阿蘇駅には「ななつ星」がその編成を横たえています。
「これが『ななつ星』か!」
今までは闇夜の中で、煌々と輝く機関車のヘッドライトと、わずかにブラインドの開いた窓からこぼれる車内の灯りを見ることしか出来なかった「ななつ星」。
その車体が余りにも艶やかに磨き上げられているので、闇を全て映し込んでしまい車体の姿が全く見えなかったのです。
…でも、明るい場所で見てもやっぱり車体が周囲の風景を映し込んでしまって、何とも不思議な色合いになっていますね。
「ななつ星」の車体には、こんなにたくさんの装飾が施されていたんですね。
デザイナー・水戸岡鋭治先生の集大成とも言うべきエンブレムとロゴの洪水です。それでも、実に上品ですっきりとした印象に仕上がっているのはさすがとしか言いようがありません。
よく見ると、今までの水戸岡作品である列車たちのデザインと同じ流れをくむものであることが分かります。
星模様で描かれた号車番号は新幹線つばめ800系やリレーつばめ、黒字に金の縁取りのプレートは「九州横断特急」や「はやとの風」などの観光ディーゼル列車、ドア上の列車愛称表示も特急電車や普通電車でおなじみの意匠ですね。
そして何と、行き先表示はLEDや方向幕ではなく、昔懐かしい伝統的な「サボ」が使われています。
3泊4日で九州南部を中心に一周するルートだと「博多←鹿児島中央←博多」と表記するんですね!
「ななつ星」の七つの星たち、7輌編成の客車をじっくり見て歩きました。
編成の最後尾7号車は憧れの社交場、展望ラウンジカー。まるで「走る大きなザッハートルテ」!
豪華なんだけれど、どこか可愛らしい感じのする車体です。
そしてもう一方の編成端1号車は、これも憧れの最高級寝台車「デラックススイート」!
1輌にわずか2部屋のみという究極の豪華寝台車です。
そのうち車体の最後部に面した部屋からは、この巨大な一枚ガラスの展望窓の眺めを完全に独占できるというから素晴らしい、羨まし過ぎる!!
…もっとも、この区間ではこの車輌に機関車が連結されるので、展望窓からは機関車の巨大な顔が独占して見える事になりますが(笑)
その機関車がこちらです。
「ななつ星」の専用機関車、DF200-7000。
DF200は本来は北海道で重量級のコンテナ貨物列車を牽引して豪雪地帯の勾配区間を高速走行するために設計されたタフでパワフルな貨物用大型機関車ですが、この1輌だけは特別仕様。
「ななつ星」の客車同様の美しい装飾を施され、プリマドンナをエスコートするエレガントな紳士のような佇まいです。
DF200-7000は阿蘇駅では、食事中の乗客のいる場所に機関車の振動と騒音が伝わらないように客車から切り離されてエンジンも停止して、10メートルほど離れた位置に移動して留置しています。
優雅な貴婦人のような客車に対しての奥ゆかしさも兼ね備えた、なかなかの紳士っぷりです。
DF200-7000の顔にはクラシックカーのような金メッキの光り輝くフロントグリルとこれも金ピカの手すり類、そしてギョロ目のようなヘッドライトケーシングという強烈なデザインが施されています。
一瞬ギョッとしてしまうような、一度見たらもう決して忘れられないような…
実に「挑戦的」、いや「好戦的」!
とにかくとんでもない印象を見るものに与える、凄まじくアクの強いデザインですが、それでも見ているうちに段々とこの顔が精悍で、かつユーモラスで可愛らしくさえ感じられてくるのは本当に不思議です。
これぞ「水戸岡マジック」!!
阿蘇駅のプラットホームで「ななつ星」に見入っているうちに、朝食を終えた乗客たちが駅前に待機していたバスに乗り移っていきます。
これから暫し列車を離れて、阿蘇の黒川温泉郷を訪ねて大分県の豊後森駅に抜け、そこで再び「ななつ星」に乗り込めるオプションコースを選んだ乗客を乗せて、「ななつ星」の専用バスが列車より一足早く出発していきました。
あっ、「ななつ星バス」はナンバーも「7」だ!(笑)
「ななつ星バス」も行ってしまったので、僕もそろそろ帰ろうかな。
「ななつ星」もいいけど、普段着の鈍行ディーゼルカーも実直で気取らなくていいね!
どちらも九州の鉄道の旅を支える、素晴らしい列車たちですね。僕はどちらも同じくらい好きですよ。
…でも、必ず乗るぞ、「ななつ星」!!
来年早々に予約受付が始まる、ななつ星クルーズ第四期(平成26年7月~9月出発分)には、僕も申し込むつもりです。
大人気なので競争倍率は高そうですが、いつか絶対に乗ります。いつか、必ず…!!
熊本駅に戻ってくると、ちょうど三角行きの観光特急「A列車で行こう」が出発していくところでした。
この「A列車で行こう」は、「ななつ星」のラウンジカーの車内インテリアの製作試作を行ったとも言われている車輌。
「ななつ星」の乗車チケットが手に入るまでは、この「A列車」に乗って夢の旅を想い描くことにしましょうか…
(取材撮影日:平成25年11月15日)