写真:特別公開を無事に終えてM台地に佇むミューロケット発射装置
毎年恒例の
JAXA内之浦宇宙空間観測所特別公開。
今年は、
小惑星探査機「はやぶさ」の地球帰還カプセル特別公開と併せて、2日間に渡って内之浦でイベントが行われました。
勿論、僕も両日共に満喫してきましたよ。その様子をレポートします。
2010年12月4日
おかえりなさい【はやぶさの里帰り】 再突入カプセル特別展示
内之浦の町からシャトルバスに乗って、山の上の観測所へ。
内之浦宇宙空間観測所特別公開、先ずは「はやぶさ」くんのカプセル展示から始まります。
内之浦宇宙空間観測所のM台地にある組み立て室、
そう「はやぶさ」が最終整備されM-Vロケット5号機に載せられて地球を旅立った、まさにその場所、その部屋でのカプセル展示です!
何億キロの旅の果てに、地球で最後に居た部屋に帰ってきた宇宙機…事実がSFを超えた、まさにその瞬間なのです。
公開前には、
「はやぶさ」の打ち上げられた2003年5月9日と、
地球に帰還した今年6月13日に地元で産まれた子を招いてのテープカットも行われました。
「旅立ちの部屋」で会うカプセル…
今回は、これで一般公開に供されるのは最後とも言われる前面ヒートシールドを含むオールスターキャストでの展示となりました。
「この部屋で、これらは組み立てられ整備されて『はやぶさ』になった…そして今、この部屋に帰ってきたんだなぁ…」
思わず胸が熱くなります。そして涙が零れます。
「今、きみの旅が本当に終わったのかもしれないなぁ… おかえり、はやぶさ」
「はやぶさ」のカプセルの帰還を見届けて、胸が一杯のまま、
気が付けばM台地の海沿いの端にある、ここに来ていました。
彼が宇宙へと翔び立って行った、ロケットランチャー。
ミューロケット発射装置。
7つのM-Vに噴射炎を叩きつけられた痕跡が生々しく残る、フレームデフレクター。
今日はミューロケット発射装置のすぐ間近まで近寄れるので、思い切ってランチャーを覗き込んでみました。
これが、ランチャーを旋回させて整備棟から引き出す「動輪」です!
超巨大な、機関車のようなギアが凄い迫力です。
でも、すっかり赤錆びていて痛々しさも漂っています。最後にこの動輪がM-Vロケットを引き出したのは、7号機が太陽観測衛星「ひので」を宇宙に送り届けた2006年9月23日。
あれからもう4年も経ってしまいました…
ミューロケット発射装置は、万が一の打ち上げ直後の不測の事態に備えて、ロケットを一刻も早く海上に出す為に海沿いの急斜面の上に建てられています。
全ての「ミューの称号」を持つ名機たちが、この海めがけて内之浦から宇宙に翔び立っていきました。
全ての「ミューの子どもたち」である科学衛星・探査機も、そして勿論「はやぶさ」も、この海を見て旅立ったのですね…
海を見ていると、整備棟の大扉が開いてロケットを据え付けるガイドレール部が姿を現しました!
やっぱりカッコいいですねぇ…
ロケットがいなくてもこんなにカッコいいのだから、実際に打ち上げ直前のM-Vをセットしたランチャを間近で見たら、本当に素晴らしい光景だったでしょうねきっと!
現在、このミューロケット発射装置の今後の処遇については一切、公式の発表がありませんが、
開発が本格的に開始された
次期固体燃料ロケット「イプシロン」の射場として内之浦が第一候補にあがっています。
内之浦からイプシロンを打つとしたら、当然ここM台地を使うでしょうから…
今後、イプシロンの射場整備に伴い、ミューロケット発射装置は解体されるのではないかとも聞きます。
M台地を離れ、シャトルバスで町へと戻ります。
「あっ、はやぶさバスだ!」 これはカッコいいですねぇ
午後からは内之浦の町の
「銀河アリーナ」で
「おおすみ」40周年記念式典が開催されました。
挨拶・祝辞に続いて
「おおすみ/L-4S-5」の記録映画上映。
懐かしい思い出話として、
ロケットを撮り続けて半世紀 の
牧工さん(元南日本新聞通信員)、
ロケットを支えた婦人会 の
橋本雅子さんが楽しく興味深いお話を披露して下さいました。
そして基調講演。
元宇宙科学研究所所長の
秋葉鐐二郎先生による
「来し方行末、宇宙の浦」
―COSPAR(国際学術連合宇宙空間研究委員会)での「おおすみ」誕生秘話に始まり、
IT、ナノテクの進歩により「携帯電話を軌道に投げ込めば、ちょっとした衛星になる」
―昭和は遠くになりにけり。
平和な時代をずっと過ごしてきた人は、何かやろうとしても出来ない理由から考えたりする。
―アメリカの民間の力は桁外れ。
日本は、地元・一般が盛り上がって民間が参加していく宇宙開発にしていく必要があるのではないか。
―軌道上組み立てなら、衛星に合わせてロケットを大型化する必要がなくなる。
小型のロケットをたくさん打ち上げ、ロケットを有翼にして飛んで戻ってくるようにすれば良い。
それも海上に落とさず、そう、内之浦にたくさんいる鳶のように!
続いて
的川泰宣先生の
「宇宙に一番近い町 内之浦」
測量で内之浦を訪れたことがある伊能忠敬の話から始まり、神話の中の内之浦へ。
海幸彦と山幸彦は、内之浦が舞台らしい。宇宙に近い町は、実は竜宮城にも近い。
内之浦の歴史への登場は、景行天皇から。
景行天皇の内裏が内之浦にあり、これが地名の由来となっているという。
その内裏の隣にある神社まで早朝散歩に行ったら、地元の人達が何やら祈願をしていた。ここの人たちは信心深いんだなと思っていたら、実はそれは「おおすみ」打ち上げ成功の祈願だったという想い出。
打ち上げに失敗して、内之浦の「ロケット」というバーで酔い潰れていたら、町の人が「元気を出せ!」と言って自宅に連れて行って猪鍋をご馳走してくれた想い出。
そして、内之浦宇宙空間観測所誕生のきっかけとなった伝説の「糸川先生小便小僧」建立の計画(如何にも的川先生らしい、会場大爆笑の楽しい計画披露!)。
宇宙研の名高い先生お二人のお話を聴けて、今日は大満足!
宿を取っている鹿屋市まで戻って、その夜は特別公開の為に内之浦に集結した宇宙ファン(twitter宇宙クラスタ)の合同大懇親会!
夜遅くまで大盛り上がりのまま、初日は終了となりました。
2010年12月5日
内之浦宇宙空間観測所特別公開
一晩明けて、今日が特別公開の本番の日となります。
内之浦宇宙空間観測所内の各施設で普段は見られない建屋内部の公開や設備の操作体験等、様々なイベントが開催され、とても全部は回りきれません。
昨日に引き続いての「はやぶさ」帰還カプセル展示やKSセンターの観測ロケット発射ドーム内ランチャ起立駆動実演、M台地のミューロケット発射装置操作体験などが目玉イベントですが、今日は
宇宙講演をメインに1日じっくり宇宙研の先生方のお話を聴くことにしました。
今年の宇宙講演は何と!
“宇宙の語り部”
的川泰宣先生、
「はやぶさ」の帰還カプセルに情熱を燃やした
山田哲哉先生、
ミューの功績と栄光を未来に引き継ぐ次期固体ロケット「イプシロン」を今まさに作っているロケットボーイ
森田泰弘先生、
そして“はやぶさを翔ばした男”
川口淳一郎先生という超豪華講師陣が続けて登場!
各先生方の公演ごとに整理券が必要でしたが、実際には席に余裕があれば整理券なしでも聴講OKという措置だったので4講演を続けて聴いてしまいました。
凄い先生方のお話をたっぷり聴けて、大満足!!
宇宙講演を終えて外に出ると、冬の陽はもう傾いています。
「はやぶさ」の故郷への里帰りを皆でお祝いする、楽しい2日間でした!
来年は、「はやぶさ2」とイプシロンロケットの新しい旅立ちの始まりを見守るために、
またこの山の上のロケット基地に来るぞ!
(レポート終わり)