俳句大学投句欄よりお知らせ!
〜季語で一句 31 〜
◆『くまがわ春秋』6月号が発行されました。
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永田満徳:選評・野島正則:季語説明
季語で一句(R4.6月号)
春の虹(はるのにじ) 「春-天文」
大工原一彦
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手から手の支援物資や春の虹
【永田満徳評】
災害支援は食料や衣類などの物資で、民間の手で行われることが多い。「手から手」という措辞に、民間支援のあたたかさが表現され、「春の虹」に災害復興へのかすかな希望を示されていて、心惹かれる。
【季語の説明】
「春の虹」は夏の虹に比べると色も淡く、たちまちのうちに消えてしまい、優艶な趣がある。乾燥していた冬の時期から雨の多い春になり、特ににわか雨が降った後に虹を見ることが多い。日の光が強まり、冬に比べて虹が現れやすくなるからである。「虹」といえば夏の季語だが、「初虹」はその年初めて立つ虹を指す。
風薫る(かぜかおる《かぜかをる》) 「夏-天文」
桧鼻幹雄
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薫風や読書眼鏡と木の椅子と
【永田満徳評】
初夏のさわやかな「薫風」が吹く戸外の庭で読書をしている情景。テーブルに「眼鏡」を置き、「木の椅子」に背を持たせ掛けて、「薫風」を楽しんでいるところがよく、涼やかな木漏れ日さえも見えてくる。
【季語の説明】
「風薫る(薫風)」は初夏の時候の言葉で、初夏の日差しのなかを吹き抜ける風といったところ。初夏のさわやかな季節を象徴する言葉で、薫風を使う時期は5月の初旬から終わり頃までとされる。新緑、若葉のころの風として使いたい季語である。和歌で草花の香りを運ぶ春の風として使われ、季語として定着した。
菖蒲風呂(しょうぶぶろ《しやうぶぶろ》) 「夏-植物」
江口秋子
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菖蒲湯や赤子の尻からつけてゆく
【永田満徳評】
「菖蒲湯」は子どもの無病息災を祈って、端午の節句に菖蒲湯に入れること。「赤子」を菖蒲湯に入れるのに「尻からつけてゆく」ところは子どもの体を愛おしむ気持がよく表現されていて、心惹かれる。
【季語の説明】
菖蒲はサトイモ科の多年草で、湿地に群生する。菖蒲の葉はよい香りがするところから古来薬草として尊ばれる。端午の節句にはこれを軒端にかけ、葉をヨモギと一緒に束ねて風呂に入れ、「菖蒲湯」として利用する。菖蒲湯は、古代中国において菖蒲の持つ強い香りが邪気を祓うものとされ、厄払い行事として生まれた。