第13回百年俳句賞授賞式!
〜 最終選考員として選考評 〜
決定:最優秀賞 「磁石」 有瀬こうこ 氏
日時:2023年12月 3 日(日) 15:00〜16:30
場所:オンラインにて表彰式を行う。
内容:表彰式の場にて最優秀作品が発表される。
主催 有限会社マルコボ.コム
共催 朝日新聞社
協賛 石川商店
※ 優秀賞作品の中から最優秀賞を決定すべく、審査に臨みました。
※本授賞式においては、最終選考員の代表として、選考評を述べました。
第13回百年俳句賞選考評 永田満徳 「火神」主宰 「俳句大学」代表
作品「磁石」 有瀬こうこ
「磁石」は全体的に共感できる句が多かった。
糸屑と言ヘぬ長さや春の風邪
この句に惹かれるのは下五「春の風邪」の季語との取合わせのうまさである。「糸屑」という、どうでもいい素材で、しかも「と言ヘぬ長さ」という措辞によって、糸屑は中途半端な長さであることを述べている。
このような上五・中七の内容と、ひどくなることはそう多くないが案外治りにくく長引くことがある「春の風邪」とをうまく突き合わせている。
春の雷南京錠の匂ひかな
うららけし小籠包をつまむ指
炒飯に小さき国旗電波の日
冴返る磁石で閉ぢるお針箱
「春の雷」と「南京錠の匂ひ」とは金属的な雰囲気が呼応し合っている。「うららけし」の句にしても、「炒飯に」にしても、「冴返る」の句にしても、大胆な取合わせであるが、微妙に響き合っている。
一物仕立ての句は難しいが、この作者のかかると、納得させられる。例えば、
薬局の白梅を嗅ぎすぐ帰る
大蟻に噛まれたことを言ひまはる
下五の「すぐ帰る」の措辞の置き方があざやかであり、また、「言ひまはる」という下五の措辞は俳諧味がある。
見立ての句はさらに大胆でおもしろい。
噴水の枝分かれして私語かしら
とんぼうのブラック企業めく正面
こんな「噴水」を、あるいは、こんな「とんぼう」を詠んだ者がいるだろうか。
季語の斡旋の巧みさ、下五への転調の見事さ、発想の豊かさはこの作者の天稟の才能を物語るものであり、今後の活躍が期待できる。
※ 第13回百年俳句賞 全応募作品
https://www.marukobo.com/50ku/oubo.html
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