【永田満徳(みつのり)】 日本俳句協会会長代行 俳人協会幹事 俳人協会熊本県支部長 「文学の森」ZOOM俳句教室講師

「火神」主宰 「俳句大学」学長 「Haïku Column」代表 「秋麗」同人 未来図賞/文學の森大賞/中村青史賞

〜 季語で一句 36 〜 『くまがわ春秋』11月号

2022年11月13日 23時42分03秒 | 月刊誌「くまがわ春秋」
俳句大学投句欄よりお知らせ!
 
〜 季語で一句 36 〜
 
◆『くまがわ春秋』11月号が発行されました。
◆Facebook「俳句大学投句欄」で、毎週の週末に募集しているページからの転載です。
◆お求めは下記までご連絡下さい。
・info@hitoyoshi.co.jp 
 ☎ 0966-23-3759
 
永田満徳:選評・野島正則:季語説明
 
季語で一句(R4.11月号)
 
稲架(はざ)      「秋-生活」
大津留直
稲を日に架けて安らふ平野かな
【永田満徳評】
「稲架」に日差しが当たっている情景。田打、田植、稲刈といった作業を終えた大地を「安らふ」と擬人化している。そこには「平野」の安らぎとともに、労働が終わった安堵の気持も表現されている。
【季語の説明】
「稲架」は刈った稲を掛けて乾かす木組み。稲を収穫時に刈り取ったあと、脱穀までの間乾燥する方法。地方によって様々な呼び方がある。天日と風によって乾燥させる自然乾燥を「稲架掛け」といい、重労働で、長びけば夕刻にまで及ぶ。電気などの乾燥機より美味しい御飯が出来ることから、今も行われている。
 
濁り酒(にごりざけ)    「秋-生活」
江口秋子
どぶろくや邪馬台国の話など 
【永田満徳評】
「どぶろく」は日本酒の原型とも言われるお酒。「どぶろく」を呑みながら、話は古代史のロマンにたどり着く。「邪馬台国の話」ほど興味を搔き立てるものはなく、つい酒量も多くなる雰囲気を詠み込んでいる。
【季語の説明】
「濁り酒」は清酒の一種。搾りを行う際は目の粗い布などを使って濾すのが特徴。濾す工程のないものは「どぶろく」と呼ばれる。清酒は澄んだ酒であるが、その対義語が濁り酒。日本酒がすっきりとした飲み口なのに対して、濁り酒はお米そのものの味が生きている感じで、どっしりと濃厚で、飲み口がとろりとしている。
 
啄木鳥(きつつき)    「秋-動物」
大工原一彦
啄木鳥や釘を使はぬログハウス
【永田満徳評】
「啄木鳥」が木を叩くのは繁殖期の夏であるが、秋の森林が心地よく聞こえる。木を叩く啄木鳥と釘を打たないログハウスとの取り合わせの妙味を感じさせる句で、森林のなかの静寂な情景をよく描いている。
【季語の説明】
「啄木鳥」はキツツキ目キツツキ科に属する鳥の総称。樹木内にいる昆虫を主食とする。木の幹をつついて穴を開け、中にいる昆虫を食べることから、「木突き」の語源がある。「啄木鳥」は「木を啄ばむ鳥」の意味。「森の大工さん」と呼ばれるが、啄木鳥が開けた穴がいろんな動物によって利用されることによる。

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