雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

重々しくそして静かに ・ ちょっぴり『老子』 ( 31 )

2015-06-19 14:33:17 | ちょっぴり『老子』
          ちょっぴり『老子』 ( 31 )

                『 重々しくそして静かに 』

重は軽の根なり

「 重為軽根、静為躁君。是以聖人、終日行、不離輜重。雖有栄観、燕處超然。奈何萬乗之主、而以身軽天下。軽則失臣、躁則失君。 」
『老子』第二十六章の全文です。
読みは、「 重は軽の根(コン)たり、静は躁(ソウ)の君たり。是を以って聖人は、終日行けども、輜重(シチョウ)を離れず。栄観有りといえども、燕處(エンショ)超然たり。奈何(イカン)ぞ萬乗の主にして、身を以って天下より軽とするや。軽なれば則(スナワチ)臣を失い、躁なれば則君たるを失う。 」
文意は、「 重いものは軽いものの根本であり、静かなものはさわがしいものの主君である。従って、聖人は、軍隊が終日行軍をしても輜重隊( 食料・武器などの補給隊 )を離れないように、いつも重々しく静かな態度を失わない。さかんなる催し物があっても心を動かされず、心穏やかに超然としている。どうして萬乗の主 ( バンジョウノヌシ・天子のこと ) たる者が、その身を天下より軽々しくしてよいものか。軽ければすなわち臣を失い、さわがしければ君主としての地位を失う。 」

重々しく、静かにふるまうことの大切さを教えています。
『老子』の至る所に出てきますが、この章も、君主たるものの心得を説いています。
ただ、私たちには、君主としての心得など学ぶ必要はないのですが、一般人が普通の生活を送る中でも、軽々しく騒ぎ立てるようなことは慎みたいものです。

何事も程々に

軽率であるよりも重厚である方が良いということは、誰でも承知していることですし、騒ぎまくっているより静かに構えている方が優れているということは誰でも知っていることです。
しかし、誰でも知ってはいても、世間には、やたらと騒ぎ立てる人もいるし、ひょこひょこ動き回る人も少なくありません。つまり、この章で『老子』が教えていることは、今更教えていただかなくても分かっています、と言いたいような内容ですが、さて、それを身につけることはそうそう簡単なことではないようです。

私たちの日常において、立場や場所によって、重厚そうな顔をしているわけにいかなかったり、寡黙を押し通すことができない場面も多いように思われます。あるいは、そう思うこと自体が、この教えを身につけることができていないという証拠かもしれません。
いずれにしても、無節操に行動したり発言したりすることは、程々にしたいものです。

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