雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

国家の崩壊 ・ 小さな小さな物語 ( 1833 )

2024-12-11 08:00:46 | 小さな小さな物語 第三十一部

内戦が続き、多くの難民を輩出し続け、体制内でも残虐な弾圧政治が行われていたと伝えられてきたシリアのアサド政権が崩壊しました。
内戦は十数年に及んでいると思うのですが、ここしばらくは、ロシアによるウクライナ侵攻やイスラエルとハマスやラヒズボラとの紛争に世界の関心が集まっている感がありましたが、その間隙を突くように反政府勢力が攻勢をかけましたが、わすが12日ほどでアサド政権は崩壊、アサド大統領は家族とともにロシアに亡命しました。
反政府軍によるダマスカス侵攻に当たっては、政府軍の抵抗はほとんどなかったと伝えられています。おそらく、中東問題や軍事の専門家といわれる人たちの中で、このあっけないほどのアサド独裁政権の崩壊を予測した人はいらっしゃったのでしょうか。

新聞などの解説によりますと、これまでアサド政権を支えていた、ロシア・イラン・ヒズボラの三者が、いずれも自分たちの紛争への対処で精一杯で、アサド政権への十分な軍事支援は行えない状態になっていたようです。また、もともとアサド政権を支えている勢力は、人口の1割程度だそうですから、一端崩れ始めると、民衆による支える勢力は極めて脆弱だということになるようです。
現在のところ、反政府軍への政権委譲は武力を伴わない形で進められるように伝えられていますが、アサド政権を担ってきた勢力の一部や、反政府軍といっても、一枚岩ではないようですし、どの程度組織だった統制が確立しているのかも不明ですから、シリアという国家がどのような変貌を遂げるのか、現時点で見通すことは難しそうです。

国家が成立に至るには、さまざまな行程を経ているようです。
わが国などは、地理的な条件もあって、比較的早い段階で国家が形成されたと言えます。神武以来というのは言いすぎでしょうが、飛鳥時代、もう少し下るとしても、平安時代の頃からは、一応「日本国」は出来上がっていたと考えてよいような気がします。
しかし、当時の為政者たちにある「日本国」というのがどういう形体、あるいは範囲と考えていたのか、正しくはよく分りませんが、当時の為政者と、現代のわが国とには相当の差異があるでしょうし、今日の姿に至るには、それなりの歴史があり、言い尽くせないような悲劇が数多く繰り返されています。
その原因は、自然災害もあれば人為的な行動もあり、また、わが国自身による事もあれば、他国からの圧力もあります。それは、逆にわが国が善悪両面で他国に影響している事もあるはずです。

今、シリアが新しい局面に立っていることは確かでしょう。
しかし、新しいスタート地点に立ったと考えるには、あまりにも課題が多すぎるような気がします。政権の崩壊と言っても、今回の場合は国家の崩壊と言っても過言ではないような変化が必要とされているように思われるからです。
例えば、アサド政権下で権力側にあった人々の影響をどう考えるのか。新しい政権作りを進めるとみられる反政府勢力が、幾つかあるとされる集団が協力関係を築くことが出来るのか。さらには、国土の広い範囲が戦乱に荒廃してしまっている状態をどのように復興させるのか。人々が生活出来るだけの衣・食・住をどのように確保するのか。これまで、さまざまに影響を与え、あるいは美味い汁を吸っていた勢力や国々とどう調性を図るのか・・、等々、解放を喜んでいる人々の映像を見ると、心が痛みます。
今、私たちの国では、国会が開かれ、さまざまな討議が行われています。いずれも、私たちの生活を良くするために腐心してくれているのでしょうが、シリアの人々から見た場合、どのように見えるのでしょうか。
恐怖政治と呼ばれるような強権をほしいままにし、他国からの軍事支援を受けていても、国家の崩壊は、私たちが考えているより遙かに簡単に怒ると言うことを、私たちは今少し真剣に考える必要があるように思えてならないのです。


 

 


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