雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

小魚を煮るが如く ・ ちょっぴり『老子』 ( 66 )

2015-06-19 10:55:50 | ちょっぴり『老子』
          ちょっぴり『老子』 ( 66 )

               小魚を煮るが如く

鬼も君主も

「 治大国若烹小鮮。以道莅天下、其鬼不神。非其鬼不神、其神不傷人。非其神不傷人、聖人亦不傷。夫兩不相傷、故徳交帰焉。 」
『老子』第六十章の全文です。
読みは、「 大国を治むるに小鮮を烹(ニ)るが若(ゴト)くす。道を以って天下に莅(ノゾ)めば、その鬼(キ)も神(シン)ならず。その鬼、神ならざるに非(アラ)ざるも、その神、人に傷つけざるなり。その神、人を傷つけざるのみに非ず、聖人もまた傷つけざるなり。それ兩(フタツ)ながら相傷つけず。ゆえに徳こもごもこれに帰す。 」
文意は、「 大国を治めるには小魚を煮るようにする。つまり、いたずらに施策で掻き回すようなことをしてはいけない。道が教える無為によって天下に臨めば、鬼も神通力を使って禍をもたらすようなことは出来ない。その鬼に神通力が無いわけではないが、その力で人民を傷つけるようなことはない。鬼の神通力が人民を傷つけないばかりでなく、聖人(君主)もまた圧政で人民を傷つけるようなことをしない。鬼も君主も共に人民を傷つけないので、両者の徳がこもごもに人民のもとに帰し、天下は太平を保つ。 」

大国の君主が天下(国家)の安泰をたもつ政策について説いていると思われます。
短いうえ比較的難しい文字の少ない文章ですが、どうも、こんがらがって分かりにくい文章でもあります。
まず、「鬼」ですが、これは国家や人民に災いをもたらす天災などを支配している者と受け取りました。
そして、「神」ですが、これは鬼に対する神ということではなく、「鬼の持っている力」を指しているようです。そうすれば、文章の意味が分かりやすくなります。
また、「聖人」とあるのは、ここでは君主のことを指しているのでしょう。

小魚を煮るが如く

この章も君主のあり方を説いていますが、なかなか面白い面があります。
一つは、鬼(天災など)と並んで君主も、人民に災いをもたらすものといっているように見えます。
そして、『道』に従って「小魚を煮るが如く」静かに優しく人民に接しよ、と言っていますが、つまり、「鬼」も「君主」も『道』の支配下にあるという考えが見えてきます。

「小魚を煮るが如く」という教えを私たちの日常に取り入れる場合、まず、子供の教育のことが頭に浮かびます。
ややもすれば、この言葉の意味を「過保護」のように受け取りがちですが、そうではなく、「無用な口出し手出しを慎んで、子供の自主性を大切にする」と考えれば、なかなか味わい深い言葉になるのではないでしょうか。

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