雅工房 作品集

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節約が安泰の礎 ・ ちょっぴり『老子』 ( 65 )

2015-06-19 10:56:38 | ちょっぴり『老子』
         ちょっぴり『老子』 ( 65 ) 

               節約が安泰の礎 

長生久視への道

「 治人事天莫若嗇。夫唯嗇、是以早復。早復、謂之重積徳。重積徳則無不克。無不克則莫知其極。莫知其極、可以有国。有国之母、可以長久。是謂深根固柢。長生久視之道。 」
『老子』第五十九章の全文です。
読みは、「 人を治め天に事(ツカ)うるには嗇(ショク)に若(シ)くは莫(ナ)し。それ唯嗇、是を以って早く復す。早く復す、之を徳を重ね積むと謂う。徳を重ね積めばすなわち克(カ)たざる無し。克たざること無ければすなわちその極を知ること莫し。その極を知ること莫ければ、以って国を有(タモ)つ可(ベ)し。国を有つ母、以って長久なる可し。是を根を深くして柢(テイ・太い直根)を固くすると謂う。長生久視の道なり。 」
文意は、「 人民を治め天に事えるには嗇(節約)が最も良い方法である。そもそも嗇であれば、もし費消した場合でも早く回復する。早く力を回復するから余力を蓄えることが出来、これを徳を重ね積むという。徳を重ね積めば克服できないものはない。克服できないものがなければその力の限界は計り知れないほど大きい。その力の限界が計り知れないほど大きければ、国家は安泰である。国家を安泰に保つ母ともいえる嗇、これによって人民も君主も長久であることが出来る。これを、根を深くして柢を固くするという。こうすることが、長生久視(不老長寿)の道である。 」

最初の部分、「治人事天・・」とあるのは、当時の君主の重大な責務として、「人民を治めること」と「天に事(ツカ)えること」があったからのようです。
「嗇」の文字は、私たちは「吝嗇」つまり「ケチ」といった感じで受け取りがちですが、ここにある「嗇」は「節約」あるいはもっと積極的な意味で「質実な生活」を指しているように思われます。
「根」と「柢」という文字が使われていますが、「根」は細根を指し、「柢」は木を支える太い直根を指します。「コンテイから覆る」などの「コンテイ」は「根柢」が本来の文字です。
最後の部分の「久視(キュウシ)」ですが、言葉の意味は「長生」と同じで、同じ意味の言葉を重ねて強調していることになります。参考書などでは「不老長寿」と説明されているものが多いようです。

節約といえば地味ですが

この章は、君主のあるべき心構えについて説いていると思われますが、スケールはともかく、私たちの生活においても同様のことが言えるのではないでしょうか。
文中に、「節約することが身についておれば、回復するのも早い」といった意味のことが説かれていますが、私たちの個人の家計においても全く同様で、いったん膨らんだ生活水準を落とすことはなかなか大変なのです。

「節約」といえば、何だか地味でいじけた感じを受けますが、『老子』先生は、「国をたもつ母」とまで行っています。また、国政に携わる人たちは、「無駄の削減、歳出のカット」などとお題目を唱えることは簡単なようですが、実現させることは難しいようです。
「節約」は、中途半端な決意や能力では実現できないことではないでしょうか。
「節約」は、胸を張って取り組む価値がありそうです。

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