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『面白い本』成毛眞著、岩波書店(岩波新書)、2012年
いまや本好きの間では知らぬ人はいない(と思われる)ほど認知度が上がってきている、ノンフィクション系おすすめ本紹介サイト「HONZ」。
その代表でもある成毛さんが、「最近20年の読書道楽人生の中から厳選した『これぞ!』と思う」ようなノンフィクション本100冊を紹介したブックガイドであります。
先端科学を面白く読ませてくれる本や、民俗学的アプローチで現代日本を描いた本、突き抜けた生き方や過酷な運命を生きた人たちの記録、ホントなのかウソなのかわからなくなるような奇妙な内容の本、電車の中では読めないような脱力系の本•••等々。
成毛さんならではの熱い語り口で紹介される一冊一冊はどれも魅力的で読む気をそそります。また、一度読んだ本(わたくしの手元にあったのは17冊)も、また読み返したくなってきました。
わたくし、読みたいと思った本に○印をつけながら読んだのですが、ついた○を数えてみたら75冊になりました。
自分が知らない世界がまだまだたくさんあることを思い知らされるとともに、この75冊を買おうとすればどんだけお金がかかるのだろうか、ということに考えが及んでめまいがしてくるのです。
いやはや。HONZのレビューをまとめた『ノンフィクションはこれを読め!』(成毛さん編著、中央公論新社、2012年)に続き、なんとも罪作りな本を出してくれたものであります。•••本好きは読まないほうがいいかもしれない(笑)。
取り上げられた本のラインナップは、本書を読んでのお楽しみとしておきますが、どうしても触れておきたいのが3冊。
ノアの方舟伝説の大洪水を科学的に検証した『ノアの洪水』(ウォルター・ピットマンほか著、集英社)と、ダチョウに魅せられた博士がその研究生活とダチョウに秘められた可能性を語る『ダチョウ力』(塚本康浩著、朝日新聞出版)、そしてアメリカに連れてこられたエスキモーの悲劇を描いた『父さんのからだを返して 父親を骨格標本にされたエスキモーの少年』(ケン・ハーパー著、早川書房)。
この3冊、わたくしも非常に気になるのですが、残念ながらいずれも品切れ、もしくは絶版となってしまっています。なんとももったいないことであります。集英社さんに朝日新聞出版さん、そして早川書房さん、重版がムリなら文庫で構わないので、ぜひとも再刊すべし!•••ねえ、お願い、再刊して。
成毛さんは、ノンフィクションを読むことの醍醐味について、このように言います。
「ノンフィクションで描かれるのは、おおむね極端な生き方や考え方だ。(中略)自分の日常生活には何の影響もないし、何の意味ももたない。
しかし、一見無駄な、極端な知識を得ることで、自分が世界のどこに位置しているかはわかるようになる。それはつまり、人間の壮大な知の営みに、自分を位置づけられるということだ」
ああ、そういうことなんだろうなあ、と思いましたね。
すぐに何かの役に立つ、ということはないけれども、その世界を知ることで自分の内面を豊かにし、生きることを楽しくしてもくれるのが、ノンフィクションを読む功徳なのかもしれません。
未知の世界への扉を開き、人生を豊かにしていくための羅針盤として、ぜひとも活用していただきたい一冊であります。ただし、本代のかさみ過ぎにはくれぐれもご用心を。
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