マクドナルドの無料コーヒー飲みながら方代さんの伝記読み継ぐ
公田耕一
2009.8.17 朝日歌壇より
ボウさん、今日の横浜の天気も曇りでしょうか。公田さんは横浜寿町に住まわれているらしいホームレスの人。今年の冬頃から朝日歌壇で歌を見かけるようになった。
朝日が「公田さん、投稿謝礼のはがき10枚が宙に浮いているので、連絡ください」と呼びかけていた。その後お手紙があったらしいが、住所など、詳しいことは知らされなかったようだ。それからこんな歌も。
胸を病み医療保護受けドヤ街の柩のやうな一室に居る
今年の夏に、寿町近辺を当地で介護の仕事を始めた友人に案内してもらった。銭湯が一回430円、お風呂のない木賃宿のようなところもたくさんあって、友人の勤める通所施設には、週二回のお風呂を楽しみに通ってこられる老人の人も多いそうだ。
公田さんの歌をよんでいると、夏に友人と歩いた界隈が蘇る。上に高速が通っていて、川が流れていて、古い神社もあって、すぐ近くにはイセザキモールのにぎやかな商店街があって、みなとみらいの近代的な建物までも歩いていけるところ。
短歌には、その人の名前とその人を取り巻く環境も含めて味わう「アイドル短歌」(とひそかに私が呼ぶ)と、短歌そのものですっくと立っている短歌があって、前者は公田さんやアメリカ在住の死刑囚であり、歌人である郷隼人さん。後者の代表として思い浮かべるのは、
「和歌の浦に 潮満ち来れば 潟をなみ 葦辺をさして 鶴鳴き渡る」の歌。
この歌は、和歌山の片男波という海水浴場に行く道に碑があって、そこを車で通り過ぎるとき、和歌山出身の夫がいつも詠いだすので、いつのまにか、みんな覚えてしまった。夫も子供のころから親から聞いていたという。たしか和歌浦せんべいの包み紙にもこの歌が書いてあったなあ。
山部赤人という万葉歌人の歌だが、誰が作ってもいいような、また誰でも作れそうな、風景をみれば(かつてそうであったのだろうと)納得するような歌。でも本当は誰にも作れないような、なめらかな調べのうっとりする歌。
公田さんの短歌で、ひさしぶりにマックに行きたくなった。短歌に出てくる方代さんの短歌も読みたくなった。ボウさん、マックで公田さんを見かけたらよろしくお伝えください。横浜の風景が蘇るすばらしい歌ですと。
同じく無料券でね。(笑)
公田さんとはどこかですれ違っているかもしれませんね・・・
横浜には マックというAA(アルコール依存)の通所施設があります。
最近、マックというとマクドナルドよりもそちらのことがとっさに頭に浮かびます。