WOWOW 2020/8/1
盗みを繰り返す謎めいた美女マーニーの秘められた過去、ヒッチコックも映画化した心理サスペンスの傑作のオペラ版。
冷たくも火花散る音楽が、怯え惑うヒロインの心の襞をすくい取る。50-60年代ファッションを再現するA・フィリップスの衣装も華やか。
【演出】
マイケル・メイヤー
【演奏】
メトロポリタン歌劇場管弦楽団 指揮ロバート・スパーノ
【出演】
マーニー・エドガー(メゾソプラノ)・・・イザベル・レナード
マーク・ラトランド(バリトン)・・・クリストファー・モルトマン
テリー・ラトランド(カウンターテナー)・・・イェスティン・デイヴィーズ
ラトランド夫人(ソプラノ)・・・ジャニス・ケリー
マーニーの母(マーニーの母)・・・デニース・グレイヴス
収録日2018年11月10日
《マーニー》のあらすじ
1959年イングランド。謎の美女マーニーに惹かれたハルシオン印刷の社長マークは、彼女の盗癖を承知でマーニーを雇うが、マーニーは会社の金庫からお金を盗んで姿を消してしまう。マークは彼女を探し出して強引に結婚するが、マーニーは心を開かず、新婚旅行でもマークに指一本触れさせない。彼女が精神的なトラウマを抱えていることに気づいたマークは、マーニーの身辺を探らせる。マーニーには一人暮らしの母親がいたが、実はその母親には男性を殺した過去があった。
このオペラの演出、マーニーには4人の分身がある。分身は劇中の人には見えないという設定らしい。
その上、マーニーは,このオペラの中で15回も着替えをする。それだけマーニーの多様性を見せようとしたのだと思うが・・・。
なお、作曲家メーヤーは、マーニー役をこのI.レナードに想定して作曲したという。
クロンビー・&・ストラツト事務所から金庫の現金を盗み出すマーニー。
この時、マーニーが金庫から現金を盗み出し、バックに詰め込む作業の一部始終を見ている男達がいる。しかし、この男達はマーニーを捕まえもせず見ているだけで消えてしまう。何のためなのか意味不明である。
一方の中心人物マーク・ラトランド(左)には、弟のテリー・ラトランドがいて、兄妹の確執がある。ラトランドには顔の左側に大きな赤いアザがあり、歌唱もカウンター・テナーで異彩を放つ。
マークの母親はラトランドの経営に信頼を寄せておらず、弟の方が能力があるとマークに向かっていったりする。
マーニーとマークが仕事の打ち合わせをしている時に雷が鳴る。さらに扉の奥に母親が子供を抱いているシーンが、ほんの一瞬見える。
マーニーのトラウマの原因が分かるともいえるこのシーンが、僅かの時間しか無く、見落としてしまいそうだ。
マーニーの愛馬フォリオが乗馬大会で、高い塀を跳び越え損ね、マーニーは落馬、フォリオは前足骨折。マークも空中に飛ばされ、怪我をするというシーンは、映画と異なり、見ているだけでは分かり難い。
以上、「映像システムとダンスのコラボ」、「スピーディーな場面展開」なのは良いけれど、ストーリーの理解がなかなか進まない。 イザベル・レナードのマーニーは、適役かも知れないが、マークが活躍しないため、全体としてのストーリーの盛り上がりは今ひとつ。
ヒチコック監督の映画「マーニー」と比べると、ショーンコネリー演じたマークはマーニーに対する強い愛が感じられて見応えがあったが、こちらのオベラは残念ながら賞賛出来ない。
”映画「マーニー」・・・ヒチコック監督作品 めいすいの写真日記 2020-7-10”