太田さん(仮名・女性)は会社の上司や不動産に詳しそうな知人に相談しながら次に住む所を探していました。
江藤さんは長年の付き合いから太田さんが親の遺産を持っている事を知っていたのです。
ある朝、太田さんは自室からエントランスへ行くとシェアハウスオーナーの江藤さん(仮名・女性)がニコニコしながら「太田さんにお話があるんだけどいいかしら?」と猫なで声で声をかけてきました。
皆にいつもキツい口調でしか話し掛けてこない江藤さんが気持ち悪いくらいの猫なで声で言ってきたのです。
これは何かあるな。太田さんは、これから仕事なので帰宅してからでも構わないですかと伝えると満面の笑みで「分かった、待ってるから」と太田さんの手を握って言ってきます。
太田さんは思わず鳥肌が立ちました。
気を取り直して、ちょうどこのシェアハウスを退去しようと考えていたのでその時に伝えようと思ったのです。
帰宅してから夕食後、再び江藤さんから声をかけられました。
エントランスには太田さんと江藤さんしか居なかったので、そこで話を聞くことにしました。
「太田さんの持っているお金を是非、あの方(江藤さんが信じている新興宗教から枝分かれした教祖的人物)の為に役立てた方が良いと思うの」
「えっ??!」
太田さんは唐突にお金の話をされたので驚きました。
なぜそんな話をいきなりしてくるのだろうと理解ができません。
「ほらぁ~。太田さんてご両親からの遺産、持ってるじゃない?あれを有効活用するにはあの方の為に支援した方が世のため人のためになると思うんだぁ。そのやり方は私が上手く活用してあげるから、ね」
江藤さんの口調は、まるでギャバ嬢がお客さんにおねだりする時の語尾にハートマークが付いている感じです。
江藤さんの年齢は70代です。太田さんは思わずドン引きしてしまいました。
江藤さんは長年の付き合いから太田さんが親の遺産を持っている事を知っていたのです。
そのお金を江藤さんが有効活用してやるから渡せと言っている内容でした。
人のお金を有効活用する?!太田さんは江藤さんにそんな事を頼んだ覚えもないし、ましてそんな事はしたくありません。
そして続けてこう言うのでした。
「太田さんは視覚障害があるでしょう。そんな大金上手く使えないと思って。だから私が提案したの。いいでしょ?」