警察庁の調査によれば2020年10月の国内の自殺者数(速報値)は2158人で、2019年10月に比べ600人以上多いなど、コロナ禍のもと(ここに来て)自殺者が昨年よりも増える傾向にあるということです。
日本の自殺率はここしばらくの間、先進7カ国(G7)で最も高くなっていますが、こうした数字からは、今回の新型コロナウイルスの感染拡大がその日本でさらに多くの人を自殺という選択に追い込んでいることがうかがえます。
自殺者の状況を性別ごとに見ていくと、男性は前年同月比で21.3%増えて1302人となる一方で、女性は(男性よりも数的には少ないものの)前年同月比で82.6%増えて851人を数え、特に女性で深刻な増加となっていることがわかります。
新型コロナウイルスの感染拡大が労働市場を直撃する中、(サービス業を中心に)とりわけ非正規で働く人が多く雇用が不安定な女性に、その影響が強く出ていると考えられています。
女性の失業や収入減は、当人ばかりでなくその家族にも大きなダメージを与えます。育児などの家庭内での負担も抱えつつ、新たな仕事を探すのも簡単ではない状況において、生活の不安などを一人で抱え込み精神的に追い込まれるケースも増えていることでしょう。
12月17日のForbes JAPANは、そんな日本の(特に女性の)自殺者の現況について、「コロナ禍で日本人女性の自殺が急増、「特有の悲劇」が顕在化」と題する記事を掲載しています。
新型コロナウイルス感染による日本の死者数は、世界的に見ればかなり少ないが、その一方で日本の自殺者はかなり多い。そして、最近の女性の自殺者の急増は、この国特有の悲劇的な問題といえると筆者は記事に綴っています。
パンデミック発生後の失業者のうち、女性は少なくとも66%を占めている。これは、小売業やその他のサービス業で働く労働者に占める女性の割合が高いことが原因と考えられ、中でも「非正規雇用」の女性の比率が高いことを反映したものだというのが筆者の認識です。
こうした働き方での仕事は、基本的にはパートタイムで給料も手当も少なく、雇用の保障もほとんどない。これは、現在の日本が抱える最も深刻な“持病”のひとつだということです。
「ウーマノミクス改革」を約束した第2次安倍政権は、この8年間で女性の就労率を約70%にまで引き上げたが、問題はこれらの女性たちの大多数が「非正規」で雇用されていることだと筆者はここで指摘しています。
この70%という数字は、本質的にフルタイム以外の形で働いている女性の割合、約66%の鏡像に過ぎない。非正規雇用の従業員は、パンデミックが起きるなど経済的に困難な状況に陥れば、簡単に人員削減の対象になると憂慮されていたということです。
筆者によれば、エコノミストたちが重視しているのは、もしも日本が女性たちに平等な競争の場を与えられていれば、それだけでも国内総生産(GDP)が約5000億ドル(約52兆円)増えるという推計だということです。
残念ながら、新たに就任した菅義偉首相は、こうした日本の女性たちが受けている経済的逆風について、ほとんど何も語っていないと筆者は指摘しています。
彼が組織した内閣は、安倍前首相にみられたトークニズム(形だけの平等主義)を踏襲している。新たに閣僚に選んだ女性はわずか2人で、どちらも最重要ポストには就いていないことからもその姿勢は見て取れるということです。
治癒が困難な家父長制とデフレという日本の既往症が、いかに予測不可能かつ危険な形で、新型コロナウイルスがもたらした混乱と融合しつつあるかについて、この記事で筆者は強い懸念を示しています。
女性の自殺が増えているという現実をどのように捉えるか。新型コロナの影響が社会の歪みの部分に取り返しのつかない負荷をかけているという認識を、新政権にはしっかりと持ってもらいたいと考える記事の指摘を、私も重く受け止めたところです。
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