厚生労働省が公表している最新の簡易生命表(2017)によると、現在、日本の男性の平均寿命は80.98年で女性は87.14年と、男性が5年連続、女性は4年連続で過去最高を更新中です。
平均寿命は、年齢ごとの死亡率が今後も変わらないと仮定し、その年に生まれた0歳児があと何年生きられるかを表す推計値として計算されます。
諸外国との比較では、現在は男女とも香港(男性 81.32 年、女性 87.34 年)に次ぐ2位の位置を占めており、日本が有数の長寿国であることに変わりはありません。
厚労省の試算では、2016年生まれの男女が後期高齢者となる75歳まで生きる割合は、女性では9割近い87.8%、男性でも約4分の3に当たる75.1%とされ、大きな戦争や未知の感染症のパンデミックなどが発生しない限り、日本の長寿化はさらに進んでいくものと考えられます。
一方、同じ日本の国内でも、住んでいる地域よって意外なほど違いがあるのもこの平均寿命の特徴の一つです。
男女それぞれについてみると、男性の平均寿命が長いのは、滋賀県(81.78年)、長野県(81.75年)、京都府(81.40年)、女性は長野県と岡山県(いずれも87.67年)、島根県(87.64年)で、いずれも(世界一とされる)香港の平均寿命を超えています。
一方、短いのは、男性は青森県(78.67年)、秋田県(79.51年)、岩手県(79.86年)、女性は青森県(85.93年)、栃木県(86.24年)、茨城県(86.33年)で、男性の平均寿命が最も長い滋賀県と最も短い青森県では3.11年、女性の平均寿命が最も長い長野県と最も短い青森県では1.74年もの格差が見られます。
地域間での医療の水準や所得、生活習慣にそれほど大きな差はない日本ですが、それでも、喫煙や飲酒、塩分の摂取量などの生活習慣の影響は意外に大きいということでしょう。
さて、先日読んだ経済誌「週刊PRESIDENT」の7月2日号に、(あまり知られていない)平均寿命の計算方法や考え方に関する興味深い記事(「平均寿命よりも長生きする人が多いわけ」)が掲載されていましたので、参考までに紹介しておきたいと思います。
おさらいになりますが、「平均寿命」は(前述のとおり)その年の死亡率がこのまま変わらないと仮定した上で「その年に生まれた子ども」がその後何年生きるか推計したものです。その年に亡くなった人の平均年齢ではありませんし、自分の年齢と平均寿命の差で「あと何年生きられる」と言のも正しい使い方ではありません。
そこで、まず平均寿命の具体的な計算方法ですが、平均寿命はその年の簡易生命表に示された、その年の年齢(1歳)ごとの死亡率から算出するということです。
その年に、男女それぞれ10万人が生まれたとすれば、この数に(その年の)0歳の死亡率(男0.00194%、女0.00198%)を掛ければ、1歳の誕生日を迎える前に男194人・女198人が亡くなって、残りの男99806人・女99802人が1歳を迎えていることが判ります。
生き残った彼らの人数にさらに今度は1歳の死亡率を掛けて、男31人・女29人が亡くなって、男99775人・女99773人が2歳になると計算し、この計算を繰り返しながら年齢を重ねさせていきます。そして、出来上がった年齢ごとの死亡者数を足し上げていくと、105歳でほぼ全員が亡くなる計算になるということです。
一方、見方を変えれば、ここに示された年齢ごとの死亡者数は、(今年の各年齢の死亡率・生存率が今後も続くと仮定した)「今年生まれた男女各10万人の各人が生きた年数」を意味しています。従って、その平均値は「死ぬ年齢の平均」、つまり「平均寿命」になるというワケです。
具体的な計算方法として、「年齢×死亡者数」で各年齢の小計を計算し、その和(生存年齢の合計値)を人数(その年の出生数)で割った数字が「平均寿命」を指すことになります。
そして、この年齢ごとの予想死亡数からは、「平均値」以上のいろいろな事実も見えてくると記事はしています。
例えば、「最頻値」は、年齢ごとの死亡者数が最大となる年齢のこと。つまり、男性では87歳、女性では93歳で亡くなる人が最も多いということですから、これが男女とも平均寿命より6歳ほども高いのには少し驚かされます。
また、「中央値」は「累積死亡者数」が出生数の半分になる(つまり同じ年に生まれた人の過半が亡くなる)年齢で、こちらは男性83歳、女性89歳と平均寿命よりもそれぞれ2歳ほど高いだけです。
両者を見ても判るように、若くして亡くなる人が一定数いるので、平均値はその分低めに出てくるため、統計上の「平均寿命」は一般的な感覚での「平均的な寿命」とは少し異なる概念と言えるでしょう。
このように、統計は代表値に何を採るかによって見え方が大きく変わると記事は指摘しています。
シニアを迎える方々も、毎年発表される「平均寿命」に一喜一憂することなく、また将来に大きな不安を抱くこともなく長寿社会を楽しんでいければそれが一番良いことなのかもしれません。
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