マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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芹井彼岸の念仏講

2012年11月25日 09時12分09秒 | 桜井市へ
阿弥陀さんなら二十五菩薩の来迎図であるが、彼岸の念仏講に掲げられた桜井市芹井の来迎図は十一菩薩。

上部に幡が翻り、小鼓、笙、琵琶などの楽器を奏でる来迎図である。

十一菩薩が往生者の魂を極楽浄土へと連れて帰る「帰り来迎」の情景と思われる掛軸。

昔からこの掛軸を掲げているという今夜のヤド家は閏年の庚申トアゲでもお世話になった乾垣内のN家。

芹井には彼岸の念仏講が3組(現在は2組)あった。

鉦を叩いて念仏を唱える講中もあるそうだが今夜の組にはそれはない。

講中が集まるまでの時間帯。

お許しをいただいて拝見したのは掛軸箱に納めていた3幅の掛軸。

そのうちの一つが「三界萬霊六親眷属乃至法界平等利益」。

数多くの戒名が記されている掛軸である。

数段下からは年月日が記されている。

天明四年(1784)から始まって寛政元年(1789)、文化(1804~)、文政(1818~)、天保(1830~)、嘉永(1848~)、元治(1864~)から明治(1868~)に至るまでだ。

寄進者が記した年号は延享三年(1746)。

およそ250年も前から書き続けられた位牌地は芹井の歴史を物語る。

阿弥陀来迎図の前に膳を供える。

炊きもののオタフクマメの椀にチクワ、エンドウマメ、カマボコ、コンニャク、アゲの煮もの椀。

トーフとカマボコが入った汁椀にご飯。

皿に盛ったのはブリ魚。

昔は白和えだったそうだ。

5品の膳はヤド家が料理するごっつぉ(ご馳走)。

同じものを集まった講中に黒の高膳で配膳していたが現在はパック詰め料理になった。

こんばんはと挨拶されて上がる講中が揃って6人。



阿弥陀来迎図にローソクを灯して手を合わせる。

念仏を申すわけでもなく、鉦を叩くこともない。

手を合わせて拝む一瞬の作法であった。

こうして今夜は膳をよばれながら語らう彼岸の念仏講。

もう一つの組もヤドに集まる。

こうした彼岸の念仏講は秋と春にも営まれる芹井の行事。

60日おきの庚申講や伊勢講にお日待っつあんもある。

パック詰め料理に移った講中でも伊勢講だけはスキヤキにするといって3月と12月の16日に集まるそうだ。

営みは5軒。

今年はお伊勢さんに参ったそうだ。

そのときに授かったお札は4月にヤカタに納めたと話す。

お日待っつあんは12月14日と決まっている。

毎月のようになんらかの講が寄合う。

芹井の年中行事は目まぐるしいと話す。

ちなみに芹井には滝倉神社がある。

隣村の滝倉の瀧ノ蔵神社から分霊を受けた神社である。

7日には神迎えに遷しましがある。

現在は第一日曜日になったがトヤ家に神さんを神遷しされる祭祀である。

神さんを箱に納めてトヤ家で祀った一週間後の13日(現在は第二土曜日)には神送りと称して神社に戻るそうだ。

(H24. 9.23 EOS40D撮影)