マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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佐紀町の筵敷きダイコン干し

2017年08月19日 09時29分28秒 | 民俗あれこれ(干す編)
山上八幡神社の板注連縄を拝見して平城京大極殿北集落を抜ける。

八幡神社がある山陵町からはそれほど遠くない地に神社が三社も並んでいる。

並んでいると云ってもやや離れている。

祭祀する地区それぞれの氏神さんである。

そこも通り抜けて帰ろうとしたら刈り取りを済ませた稲作地の向こう側にキラキラ光る白いものがあった。

何かをそこで干している。

モチなのかそれとも・・・。

それを拝見したく車を停めた。

その場は民家の真ん前。

つまりは敷地内である。

門屋の方から男性が現われた。

天日干しをされている状況が美しく写真を撮らせてもらいたいと伝えたらどうぞ、である。

昨日までは雨が降っていた。

曇り空が続く12月。

収穫したダイコンを何時干していいやら困っていたそうだ。

この日の朝は氷点下。

五ケ谷辺りは畑に溜まっていた水が凍っていた。

たぶんここらもそうであったろう。

朝は寒かったが晴れ間が射し込んだ。

天気が良ければと待っていた日がやってきた。

そう判断されてダイコン切り作業。

輪切りしたダイコンを1/4に切る。



それを敷いた筵の上に広げる。

筵は風に飛ばされないように両端に紐を結んで固定している。

ご主人がいうには天日干しには風が吹かないと・・という。

ダイコンは水分がある。

筵であれば乾いたダイコンは難なく剥がれる。

カンピョウ干しの場合も同じだ。

水分があるカンピョウは竹竿であっても金属ポールであって、そのまま巻いたらへばりついて剥がれなくなる。

そのために工夫したのは竿に稲藁を巻くことである。

特に麦わらであれば難なく剥がれる。

筵を敷かれたのは賢明な措置なのだが、乾くには相応しくない。

つまりそこに必要なのが「風」である。



昔は柿の木の枝にぶら下げて天日干しをしていたという。

ダイコンは切ることもなく葉っぱを付けたそのままの形のダイコンの首に藁紐で括る。

輪っかにした藁紐を枝に引っかけて天日干し。

その形態のほうが風に当たりやすいから乾きが早いのである。

昔からダイコン干しは横にある柿の木を使ってきたというご主人の話しだった。

そういえば私の頭の中の記憶が蘇ってきた。

そんな方法論を話してくれたご主人はどの神社が氏神さんになるのか聞いてみた。

ここは奈良市佐紀町。

旧村の景観をみせる村で育った。

ここより東は歌姫街道。

その街道沿いの東はかつて畑だった。

今では新しい家が建っているが、昔はなかったという。

で、氏神さんと云えば釣殿神社

そうだったのか、である。

で、あれば名前を知りたくなって質問した。

質問したのは前掛けと呼ぶ注連縄である。

ご主人が云うにはその注連縄は歌姫街道沿いに建つ集会所で結うそうだ。

30日の大晦日の朝、大祓いをしてから拝殿前に運んできた注連縄を架けているはずだという。

拝殿に架けるということは奥が社殿である。

つまりは前に架けるから前掛けというのであるが、かつては「ゾウガイ」と呼んでいた。

その表現は間違いないと思う。

県内各地事例によれば簾型の注連縄は「ドウガイ」若しくは訛った「ゾウガイ」である。

地域によってはもっと訛った呼び名もあるが、民俗語彙からしても間違いない。

そんな言い方を覚えておられた昭和9年生まれのOさんと出会ったことに感謝する。

(H28.12.15 EOS40D撮影)