マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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北大河原本郷のコンニャク作り

2017年08月25日 09時29分32秒 | もっと遠くへ(京都編)
南山城村北大河原・本郷の山の神が行われたのは今月の12月10日だった。

子どもたちが村の各戸を巡ってお米代集め。

何十軒も巡っているなかのお家にコンニャクを成形する木製の型枠があった。

そのお家のご婦人はそこにできたてのコンニャクを入れて作ると云っていた。

よろしければ作り方を学びたく、取材させてもらえないかその場でお願いしたら承諾してくださった。

コンニャク作りは地元の婦人たちが何人か集まって作る。

コンニャク作り場は京都府相楽郡南山城村北大河原本郷にある本郷コミュニテイーセンター内の調理場である。

この日に集まった婦人たちは元婦人会OBの老人会メンバーになるそうだ。

仲の良い数人が集まった有志の人たちである。

有志婦人は“大人もワクワク体験事業「手作りコンニャク教室」を開いている。

教室の案内に材料と作り方を書いている。

材料は成形の型枠台一枚で作るコンニャク枚数が12個分の量が書いてある。

蒟蒻玉(芋)を煮て皮を剥いた中身の重さは1kg。

人肌ぬるま湯は芋の3倍の3リットルに粉の炭酸ソーダが大さじ3杯の16g。

これはぬるま湯1カップで溶く。

ここに注意書きがある。

薬(炭酸ソーダの他)によって量(重さ)が違うので購入するときは薬局に尋ねる。

蒟蒻芋1kgに対して石灰なら大さじ15杯。

結晶の炭酸ナトリウムなら大さじ1杯だ。

他にも無水炭酸ソーダなどいろいろ使われる、というから会でどの薬を使うか選択しなくてはならない。

作り方のはじめは蒟蒻芋を綺麗に洗って、皮のまま煮る。

ちなみに蒟蒻芋は3年もの。

Kさんがタネイモから育てた蒟蒻玉。

畑で作った自家栽培の蒟蒻芋である。

タネイモの大きさによって2年でコンニャク作りに適する場合もあるらしい。

また、自家栽培だけにデキ不出来によっては店屋で調達するときもあるようだ。

次に煮あがった蒟蒻芋の皮を剥くが、丸々の形で剥くのではなく、半切り状態にしてから皮を剥く。

茹でた蒟蒻芋はさいの目切りして袋詰め。

量を計って1kg単位に用意した袋に詰めておく。

皮剥きは前日までに分量を量って用意しておく。

1kgにならない場合は、重さを計って、その量に応じた炭酸ソーダ・湯量を計算して作る、というから、目分量ではコンニャクにならんらしく、計量が大切なことがここでわかる。

教室の作り方資料に手を加えて以下の順に作り方を記しておく。



茹でて皮を剥いた蒟蒻芋を潰すにはミキサーを使う。

3リッターの人肌ぬるま湯を鍋にかけておく。

さいの目切りの蒟蒻芋をミキサーに入れてぬるま湯を注ぐ。

蒟蒻芋が潰れてぐちゅぐちゅになるよう、ミキサーにかける。

潰れた蒟蒻芋はドロドロ。

これを大きめのボウルに移す。

完全な潰れでないほうが良いようだ。

手造りコンニャクの食感はここで決まるような感じがする。

噛み応え、舌触りにコンニャク本来の味がここで決まる。



はじめはヘラなどの道具でかき混ぜる。

ボウルは金属でなくてもプラスチックでも構わない。

混ぜても飛び出さないような大きさを選ぶ。



ボウルに入れたドロドロ芋を手で練る。

練り方は人それぞれ。

手ですくように手前に引いてぐっと前に圧す。

そんな感じのように見えたこね作業は力が要る。

力を込めて混ぜて、混ぜて・・・。

その速度は決して遅くない。

見た目以上に素早い作業である。

ぐっと押し出すには手のひらの付け根部分だ。

資料にはこねているドロドロ芋が容器(ボウル)から離れるようになるまで、しっかりとこねるとある。

また、よくこねると、きめの細かいコンニャクができるとあるが・・・。



ほぼできあがった状態になれば、炭酸ソーダなどの薬(今回は石灰)を計量した水で溶く。

お椀に溶いた石灰水は白濁。



スプ-ンで量を調節しながらこねたコンニャクにトロトロ落として混ぜる。

まんべんなく混ぜてダマにならないようにしっかりとこねる。

そうすることで、こねた蒟蒻は時間が経つにつれ凝固していく。

成形の型枠はコンニャクを入れる前に水に濡らしておく。

こうしておかないと型枠からコンニャクを外しにくくなる。

ボウルのコンニャクを型枠に落とし込んで手で広げる。



こねたコンニャクは凝固が進む。

柔らかいうちに手で型枠いっぱいに詰め込むように力を入れて広げる。

この場合は水を一切使ってはならない。

水分がコンニャクの隙間に混ざってしまうからだ。

手のひらで広げるように伸ばして、伸ばして・・。

ときには力を込めて平手でぺったん、ぺったん。

空気を抜くための作業の音はぺったん、ぺったん。

動作が早ければパタ、パタ音だ。



特に気にしなくてはならない箇所は型枠の角の四隅。

隅に隙間ができないよう、念入りに詰め込む。

型枠すりきれまで、滑らかになるよう平らにする。

そこまで詰めたら表面を水で濡らして整える。

ここまでくれば一安心。

しばらくすればこねたコンニャクが凝固状態になる。

固まり具合を確かめて包丁を入れる。

包丁道具はOさん自前の手作り。

薄めの金属片を手で持てるように木片を嵌めている。

その包丁で筋目をつける。



コンニャクは柔らかいが、先につけるのは筋目。

型枠には12枚切りになるよう縦横それぞれの枠に溝を切っている。

型枠の大きさは横幅が75cm。

縦が20cm。

溝切りしたコンニャクの長さは10.5cm。

溝切りの印しは2種理。

「×」印は6切り。

「|」印の数は5である。

今回は一枚で12枚作ったから「|」印を採用したそうだ。

なお、厚さを計ってみれば3cmだった。

2種類の分離印があるから定型のコンニャクに揃えることができる。

30cm程度の木片に当てて包丁でやや深めの筋目をつける。

長めの包丁で横一直線。

そして縦線も入れる。



そして斜め角度に立てて、押し込むように切る。

ずばっとではなく、包丁の長さで切っていく。

すべてが分離できたら型枠の底に入るように包丁を入れてすくうような感じで取り上げる。



取り上げるコンニャクの大きさよりも包丁が大きいわけがここでわかった。

型枠から剥がしにくいこともある。

その場合はそこにヘラでも当てて取り外す。

12枚切りができたら沸騰した湯が入っている大鍋につけて茹でる。

茹で時間は30分。

しっかりとした凝固状態こするには30分の茹で時間が要る。

多少の差はあったとしてもざっと30分。

投入したときの時計を覚えていないと30分経ったかどうかわからなくなる。



これ、もうできているかな、といえば、あのとき時計の針はあそこやったから大丈夫や、と云って大鍋から引き上げた。

こうしてできあがったコンニャクは水に浸けて冷ます。



勢いよく出る水は蛇口を開けたままだ。

こうしておかないと熱いコンニャクは冷めない。



時間は決まっていないが、コンニャクが冷たくなるまで水に浸しておく。

できあがったコンニャクは家から持ってきたバケツに移して完成だ。

段取りが良いから昼過ぎに作業を終えた。

今回使用した原材料の蒟蒻玉は14個。

皮の分量も考えて少し多いめに準備したという。

手間をかけて作ったコンニャク。

「ぎょうさん作りはったけど、早く食べないと、あきませんね」と云えば、「保存さえ上手くしておけば日持ちします」とのことだ。

コンニャクの保存はバケツのままで構わない。

家の軒下に置いて冷たい水に浸けておく。

ときおり新しい水に入れ替える。

そうして繰り返しておけば正月料理になる。

今夜は造りにして食べるという婦人たちにお礼を述べて引き上げた。

取材を終えたご婦人たちから作りたてのコンニャクをいただいた。

一枚は今夜の我が家のおかずの一品。

いただくのは当初通りのコンニャクのお造り。

今夜に喰うから「コンニャク」が訛って「コンヤク」。

つまりは洒落の「今夜に喰う」である。

手造りのコンニャクは洒落ではなく、とにかく旨い。

我が家は辛子味噌が定番。

かーさんが手造りした辛子味噌をたっぷりつけていただく。

あれぇ、どことなくこれまで食べた手造りコンニャクとちと違う。

さらっとしているし、味も甘く感じる。

コンニャクは独特の匂いがするが、これは作っているときからはまったく嫌みがない香りが漂っていた。

調理場を一旦離れて再び入ったときの香りに心が穏やかになるような香りだった。

コンニャクの味もそういう感じである。

手造り特有のザラツキ感は少ないが、歯ごたえがある。

噛み応えがあると云ったほうが良いのかもしれない。

とにかく箸が止まらない辛子味噌でいただくコンニャクの造り。

調理場で作業していた婦人が云った。

造りは山葵だよねと・・。

その言葉を思い出して我が家もそうした。

残り1/3になったところで食べる山葵醤油。

旨いと思わず声が漏れた。

最初から山葵醤油であったなら旨さに気がつかない。

そう、思うのである。

辛子酢味噌に慣れた口をより一層に引き立てた山葵醤油にバンザイする。

朝になってふと思った。

辛子だけならどんな味になるだろうか、である。

(H28.12.23 EOS40D撮影)