今月の3月3日に訪れた広陵町中(萱野)の小北(こぎた)稲荷神社。
初午祭にハタアメが配られると知って訪れたが、応対してくださった権禰宜さん夫妻の話しによれば今年はハタアメを入手することができなくなったが神事ごとはしていると話してくれた。
また、当神社行事に出仕されている三郷町の坂本巫女さんは、この行事に参拝される信者さんにご祈祷の剣舞神楽をしていると聞いている。
ハタアメはもう供えることはできなくなったが、神事ごとや境内で行われる護摩焚きを拝見したく寄らせてもらった。
高田川堤防東側に鎮座する小北稲荷神社の創建は欽明天皇の時代に遡るようだ。
天孫降臨の際にお伴した三十二柱の神々と五柱の稲荷神に食物の神である保食神(うけもちのかみ)に仕えた小北大明神を合わせて三十八社を祭っていたという。
前日の7日にも訪れた小北稲荷神社に初午祭を案内するポスターが貼ってあった。
厄除開運、家内安全、商売繁盛に大祈祷・神楽。
そして、大護摩に護摩木を焚いて厄祓い。
しかも、餅撒きに神酒、御守、いなり飴の無料授与もあると書いてある。
着いた時間は9時半。
信者さんたちは神事に拝殿に上っておられた。
宮司、権禰宜さんに巫女さんも上っている。
そのうちに始まった儀式を拝観するにはガラス越し。
受付されている場から拝観していた。
拝殿正面に赤地に白抜き染めした開運厄除け祈願の幟旗が2本。
境内入口付近にも幟旗がずらりと並んで参拝者を迎えていた。
なんとなく奉納した人たちの名前を見ていた。
油性マーカーで書かれた名前は「高橋礼華」。
えっ、である。
名前を書いたところから上に見上げた。
そこにあった文字は「必勝リオオリンピック」だ。
リオオリンピックは2016年(平成28年)、ブラジルのリオデジャネイロで開催された第31回オリンピック競技大会である。
開催期間は平成28年の8月5日から21日までの17日間。
活躍された日本選手が取得したメダル数は金メダルが12枚。
銀メダルが8枚で銅メダルは21枚の成績を勝ち取った。
「高橋礼華」といえば、相方の「松友美佐紀」とともにペアを組んだ女子ダブルスで日本バドミントン史上初の金メダルを獲得した二人。
なぜにここ小北稲荷神社の開運厄除け祈願に名前があるのか。
実は「高橋礼華」選手の生まれ故郷は橿原市。
橿原市立白橿南小学校(橿原ジュニア所属)におられた有名選手。
おばあさんが小北稲荷神社の信者さんであることから縁があった孫の高橋礼華さん。
いわば氏神さんに必勝を願って幟旗を揚げたようだ。
ちなみに相方の「松友美佐紀」さんも幟旗を揚げている。
願掛けは「バドミントン 必勝リオオリンピック」。
拝殿正面に立てていた2本は、獲得した金メダルも、といいたいが、それはなく幟旗は凱旋したかのように昇陽の光を堂々と浴びていた。
拝殿内で神事が行われている時間帯であってもおみくじをする参拝者は多い。
そのうち拝殿廻りを動き回っている参拝者に気づく。
せわしくなく動く人もおられるが、ゆっくり回る人も・・・。
おそらく願掛けにお百度参りをしているのでは、と思った。
動きをじっと拝見していたときにわかった竹箆がある。
目を近付けたら「心願成就」の文字があった。
願主の名はそれぞれある。
同名願主の竹箆が何本も置いてあった場は狛犬さんのまたぐらだ。
高齢の婦人がお百度参りをしていた。
廻り終えてから伺った話しによれば、33回も廻っているという。
願掛けの回数は33回。
何周廻ったかわかるように竹箆をもって数えている。
33回の回数で思い起こすのは神仏に祈願する心身清浄、禊ぎの垢離取りである。
奈良県内の行事に垢離取りをするという地域は少なくない。
願掛けに「一万度」と称する地域もまた少なからずやある。
県内事例で最も多い行事は風の祈祷である。
一般的に云われるお百度参りのように境内をぐるぐる回る。
その周回数を数える道具はここ小北稲荷神社と同様の竹箆である。
願いが叶った人が後々に奉納されたと思われる竹箆の本数は多い。
どなたでも使えるように願掛けを遂げたから利用してください、ということだろうか。
数取り竹箆事例は、民俗探訪に訪れた京都府加茂町銭司の日蓮宗妙見山本照寺にもあった。
稲荷神社の境内社は数多い。
その一つずつでもないようだが、お百度参りをされているいくつかのところにお供えを置いている人もいる。
お酒や餅、揚げさんもあったが、何個か目についたのが「浄焰」の焼印を押した饅頭である。
この「浄焰」焼印がわかったのは、手水鉢にあった拭きタオルである。
なんとなく牛玉宝印にも思えるような文様を染めたタオルに「清水」、「浄焰」とあったからだ。
寄進者のお名前かどうか存知しないが、饅頭の焼印が「浄焰」紋様によく似ていたからそう思った。
ちなみにお百度参りをされていた高齢の婦人が云うには「浄焰」饅頭は常用饅頭。
饅頭は「おいなりさん」だと云っていた。
お茶受けの常用饅頭は初午に供えるからお店で買ってきたと話してくれた婦人は33回も廻ることができない身体。
仕方ないので廻る回数はぐっと減らした「短縮型にさせてもらっています」、と、申しわけなさそうに云われていたのが印象に残った。
ところで境内にお百度石がある。
ずっと拝見していたが、そこを支点に廻っていなかったように思えた。
そうこうしているうちに厄除け祈願の神事が終わった。
宮司、権禰宜さん、巫女さんらが拝殿から出てこられ、神饌御供を並べた護摩焚きの場に移られた。
護摩焚き神事に並ばれたのは宮司、権禰宜さんに二人の女性。
ある方の話しによれば、お稲荷さんに神託を伺うイナリサゲ(稲荷下げ)の人だと聞いた。
厄よけの護摩焚きを囲むようにしている参拝者は多い。
「今日はこぎたはんのはつうまや」という人もいる。
祓詞、修祓、降神の儀。
そのとき同時に音花火が揚がった。
そして献饌、祝詞を奏上されて始まった護摩焚き。
藁束を詰めた青竹を手にしたイナリサゲさんが動いた場所は拝殿受付。
オヒカリから移してもらったご神火を授かる。
2本ともメラメラと燃え上がった基火を交差させ、そして護摩焚き内部に入れて点火した。
瞬く間に燃え上がる護摩壇。
音を立てて燃え上がるとともに煙も舞い上がる。
もうもうたる煙が辺りを覆う。
火の勢いを操っているようかに見えた作法。
護摩の火を自在に制御する術であろうか。
修法気合いに「気」を込めて火を動かしているようかに見えた。
火が大きくならないように予め汲んでいた水を柄杓で護摩壇にかける。
それと同時に始まった護摩木に願いを込めた願主の読み上げ。
厄除け願いの護摩木を一本、或いは纏めて護摩火に投入する。
火は舞い上がり、煙が立ち上る。
風も舞い上がったかのように火の手は吹きあがる。
火の勢いを鎮める水やり。
火の勢いは衰えるが、熱気は冷まされることもない。
10分以上も燃え上がった護摩壇に枕にした材の骨組みが現われる。
子どもたちも見守っているが、護摩焚きはまだまだ終わらない。
点火されてからおよそ40分も経ったころだ。
護摩壇の残り火に近寄る人がいる。
下着のシャツを乾かしているのだろうか。
お話しを伺えば、残り火のご利益をもらっているということだった。
下着シャツは乾かしているのではなく、この護摩焚きに来ることができない病者さんが普段に着用している下着を家族が代わりにもってきて、残り火に当てれば病気が治ると聞いてそうしているという。
下着だけではなく病者さんが使っているタオルも残り火にあてる。
「浄火」の火にはご利益がある。
下着やタオルを持ち帰って使えば病気が治ると信じられたから、そうしている民間信仰。
先に拝見したお百度参りも民間信仰。
ありがたい初午行事にお会いした私は巫女さんからも「気」を入れてもらった。
小北稲荷神社の厄除け祈願の初午祭は参拝者に振る舞われる御供撒きもある。
窓を開けた拝殿より放り投げられる御供餅。
土がついても大丈夫なように袋に入れて投げる。
子どもも大人も手が伸びていた。
(H29. 3. 7 SB932SH撮影)
(H29. 3. 8 EOS40D撮影)
初午祭にハタアメが配られると知って訪れたが、応対してくださった権禰宜さん夫妻の話しによれば今年はハタアメを入手することができなくなったが神事ごとはしていると話してくれた。
また、当神社行事に出仕されている三郷町の坂本巫女さんは、この行事に参拝される信者さんにご祈祷の剣舞神楽をしていると聞いている。
ハタアメはもう供えることはできなくなったが、神事ごとや境内で行われる護摩焚きを拝見したく寄らせてもらった。
高田川堤防東側に鎮座する小北稲荷神社の創建は欽明天皇の時代に遡るようだ。
天孫降臨の際にお伴した三十二柱の神々と五柱の稲荷神に食物の神である保食神(うけもちのかみ)に仕えた小北大明神を合わせて三十八社を祭っていたという。
前日の7日にも訪れた小北稲荷神社に初午祭を案内するポスターが貼ってあった。
厄除開運、家内安全、商売繁盛に大祈祷・神楽。
そして、大護摩に護摩木を焚いて厄祓い。
しかも、餅撒きに神酒、御守、いなり飴の無料授与もあると書いてある。
着いた時間は9時半。
信者さんたちは神事に拝殿に上っておられた。
宮司、権禰宜さんに巫女さんも上っている。
そのうちに始まった儀式を拝観するにはガラス越し。
受付されている場から拝観していた。
拝殿正面に赤地に白抜き染めした開運厄除け祈願の幟旗が2本。
境内入口付近にも幟旗がずらりと並んで参拝者を迎えていた。
なんとなく奉納した人たちの名前を見ていた。
油性マーカーで書かれた名前は「高橋礼華」。
えっ、である。
名前を書いたところから上に見上げた。
そこにあった文字は「必勝リオオリンピック」だ。
リオオリンピックは2016年(平成28年)、ブラジルのリオデジャネイロで開催された第31回オリンピック競技大会である。
開催期間は平成28年の8月5日から21日までの17日間。
活躍された日本選手が取得したメダル数は金メダルが12枚。
銀メダルが8枚で銅メダルは21枚の成績を勝ち取った。
「高橋礼華」といえば、相方の「松友美佐紀」とともにペアを組んだ女子ダブルスで日本バドミントン史上初の金メダルを獲得した二人。
なぜにここ小北稲荷神社の開運厄除け祈願に名前があるのか。
実は「高橋礼華」選手の生まれ故郷は橿原市。
橿原市立白橿南小学校(橿原ジュニア所属)におられた有名選手。
おばあさんが小北稲荷神社の信者さんであることから縁があった孫の高橋礼華さん。
いわば氏神さんに必勝を願って幟旗を揚げたようだ。
ちなみに相方の「松友美佐紀」さんも幟旗を揚げている。
願掛けは「バドミントン 必勝リオオリンピック」。
拝殿正面に立てていた2本は、獲得した金メダルも、といいたいが、それはなく幟旗は凱旋したかのように昇陽の光を堂々と浴びていた。
拝殿内で神事が行われている時間帯であってもおみくじをする参拝者は多い。
そのうち拝殿廻りを動き回っている参拝者に気づく。
せわしくなく動く人もおられるが、ゆっくり回る人も・・・。
おそらく願掛けにお百度参りをしているのでは、と思った。
動きをじっと拝見していたときにわかった竹箆がある。
目を近付けたら「心願成就」の文字があった。
願主の名はそれぞれある。
同名願主の竹箆が何本も置いてあった場は狛犬さんのまたぐらだ。
高齢の婦人がお百度参りをしていた。
廻り終えてから伺った話しによれば、33回も廻っているという。
願掛けの回数は33回。
何周廻ったかわかるように竹箆をもって数えている。
33回の回数で思い起こすのは神仏に祈願する心身清浄、禊ぎの垢離取りである。
奈良県内の行事に垢離取りをするという地域は少なくない。
願掛けに「一万度」と称する地域もまた少なからずやある。
県内事例で最も多い行事は風の祈祷である。
一般的に云われるお百度参りのように境内をぐるぐる回る。
その周回数を数える道具はここ小北稲荷神社と同様の竹箆である。
願いが叶った人が後々に奉納されたと思われる竹箆の本数は多い。
どなたでも使えるように願掛けを遂げたから利用してください、ということだろうか。
数取り竹箆事例は、民俗探訪に訪れた京都府加茂町銭司の日蓮宗妙見山本照寺にもあった。
稲荷神社の境内社は数多い。
その一つずつでもないようだが、お百度参りをされているいくつかのところにお供えを置いている人もいる。
お酒や餅、揚げさんもあったが、何個か目についたのが「浄焰」の焼印を押した饅頭である。
この「浄焰」焼印がわかったのは、手水鉢にあった拭きタオルである。
なんとなく牛玉宝印にも思えるような文様を染めたタオルに「清水」、「浄焰」とあったからだ。
寄進者のお名前かどうか存知しないが、饅頭の焼印が「浄焰」紋様によく似ていたからそう思った。
ちなみにお百度参りをされていた高齢の婦人が云うには「浄焰」饅頭は常用饅頭。
饅頭は「おいなりさん」だと云っていた。
お茶受けの常用饅頭は初午に供えるからお店で買ってきたと話してくれた婦人は33回も廻ることができない身体。
仕方ないので廻る回数はぐっと減らした「短縮型にさせてもらっています」、と、申しわけなさそうに云われていたのが印象に残った。
ところで境内にお百度石がある。
ずっと拝見していたが、そこを支点に廻っていなかったように思えた。
そうこうしているうちに厄除け祈願の神事が終わった。
宮司、権禰宜さん、巫女さんらが拝殿から出てこられ、神饌御供を並べた護摩焚きの場に移られた。
護摩焚き神事に並ばれたのは宮司、権禰宜さんに二人の女性。
ある方の話しによれば、お稲荷さんに神託を伺うイナリサゲ(稲荷下げ)の人だと聞いた。
厄よけの護摩焚きを囲むようにしている参拝者は多い。
「今日はこぎたはんのはつうまや」という人もいる。
祓詞、修祓、降神の儀。
そのとき同時に音花火が揚がった。
そして献饌、祝詞を奏上されて始まった護摩焚き。
藁束を詰めた青竹を手にしたイナリサゲさんが動いた場所は拝殿受付。
オヒカリから移してもらったご神火を授かる。
2本ともメラメラと燃え上がった基火を交差させ、そして護摩焚き内部に入れて点火した。
瞬く間に燃え上がる護摩壇。
音を立てて燃え上がるとともに煙も舞い上がる。
もうもうたる煙が辺りを覆う。
火の勢いを操っているようかに見えた作法。
護摩の火を自在に制御する術であろうか。
修法気合いに「気」を込めて火を動かしているようかに見えた。
火が大きくならないように予め汲んでいた水を柄杓で護摩壇にかける。
それと同時に始まった護摩木に願いを込めた願主の読み上げ。
厄除け願いの護摩木を一本、或いは纏めて護摩火に投入する。
火は舞い上がり、煙が立ち上る。
風も舞い上がったかのように火の手は吹きあがる。
火の勢いを鎮める水やり。
火の勢いは衰えるが、熱気は冷まされることもない。
10分以上も燃え上がった護摩壇に枕にした材の骨組みが現われる。
子どもたちも見守っているが、護摩焚きはまだまだ終わらない。
点火されてからおよそ40分も経ったころだ。
護摩壇の残り火に近寄る人がいる。
下着のシャツを乾かしているのだろうか。
お話しを伺えば、残り火のご利益をもらっているということだった。
下着シャツは乾かしているのではなく、この護摩焚きに来ることができない病者さんが普段に着用している下着を家族が代わりにもってきて、残り火に当てれば病気が治ると聞いてそうしているという。
下着だけではなく病者さんが使っているタオルも残り火にあてる。
「浄火」の火にはご利益がある。
下着やタオルを持ち帰って使えば病気が治ると信じられたから、そうしている民間信仰。
先に拝見したお百度参りも民間信仰。
ありがたい初午行事にお会いした私は巫女さんからも「気」を入れてもらった。
小北稲荷神社の厄除け祈願の初午祭は参拝者に振る舞われる御供撒きもある。
窓を開けた拝殿より放り投げられる御供餅。
土がついても大丈夫なように袋に入れて投げる。
子どもも大人も手が伸びていた。
(H29. 3. 7 SB932SH撮影)
(H29. 3. 8 EOS40D撮影)