マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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都祁白石町の民俗行事から

2020年12月16日 09時28分52秒 | 楽しみにしておこうっと
2日にかけて刺しサバ干しを撮らせてもらった都祁白石町の辻村商店。

お礼に2009年(平成21年)に発刊した著書を献本した。

京都の出版社である淡交社が発刊してくださった『奈良大和路の年中行事』である。

その著書には11月初めに行われる氏神さんの祭りを掲載している。

氏神社の国津神社に向かって渡御する座の十人衆。

狩衣を着た祭りの頭屋に黒門付き姿の十二人衆。

上の六人衆と下の六人衆からなる座中である。

店主も座中であるからお渡り行列に参列する白石町の「ふる祭り」。

六人衆の一番若い人が先頭を行く太鼓打ち。

スコを持つ座中がお渡りをする姿は黒の山高帽を被っていると教えてくれたのは、当時座中であったNさん。

教えてくれた場は隣村の都祁友田町に鎮座する都祁水分神社。

祭礼に各郷村が座する座小屋におられたNさんだった。

そのことを聞いて国津神社の場を確かめに来た日は平成17年11月1日だった。

白石町のふる祭りを取材したのは翌年の平成18年11月3日

鳥居を潜って参進する一行をとらえた姿を載せた。

あれからもう12年も経っていた。

当時、お渡りをしていた人たちは年季が終わって座中を退いていることだろうが、その掲載があるから、今回お世話になった店主に献本することにした。

頁をめくっていた奥さん。

あっと驚く仕掛けはないが、隣村の行事に写っていた婦人の名が口に出た。

その行事は平成19年の9月12日に行われた隣村の南之庄町の歓楽寺の薬師会式のボタモチ籠りである。

各家で作ったボタモチを持ち寄って法会を営む

続けて奥さんが云った。

ボタモチ籠りは白石町でもしているというのだ。

白石町にボタモチ籠りがあると知ったのはずいぶん前のこと。

どなたが話してくれたことさえ覚えていないが、北と南垣内のお寺でしていると聞いていた。

北になるのか、南のそれであるのか、わからないが、営みの場はすぐ近くにある融通念仏宗派の興善寺にある薬師堂。

日程は南之庄と同じ9月12日であったが、今は集まりやすい直近の日曜日らしい。

朝から境内やお堂を清掃し、それが終ってからのお昼のようだ。

残念なことに当日は毎年出かける十津川入り。

この日は大宇陀栗野も薬師堂に行事がある。

行事の名称は十二薬師。

先だって取材した天理市柳本町の薬師堂で行われる行事も十二薬師であるが、営む月は7月12日。12日、つまりは薬師さんの縁日。

柳本町に法要を営んでいた長岳寺住職がいうには、薬師さんを守っている十二神将の数であると話していた縁日が12日である。

ボタモチ籠りを掲載している頁に大きなズイキを並べて法要している写真がある。

それも南之庄町歓楽寺の金剛会式である。

その掲載写真にへぇー、と声をもらした。

ペラペラと捲られた奥さん。

私の出里の行事も載っているという。

それは天理市福住町上入田の行事。

不動寺の御膳である。

その頁写真を見たお店の手伝い女性もまた上入田の人。

盛り上がった話題は出里までおよんだ収録行事である。

これほど喜んでいただくと著者冥利に尽きる。

その頁の次もまた隣村の小倉町である。

上入田とほぼ同じような造りもんの野菜を供える行事である。

場は小倉町の観音寺。

17日に行われるから十七夜の会式とも呼んでいる観音寺会式である。

詳しいことは書けないが、小倉町の婚姻関係は特殊になるようだ。

そのことが関係するのかどうかわからないが、小倉町から嫁さんをもらう場合は、氏神を祀る八柱神社に人形を供えるらしい。

機会があれば一度伺いたい民俗である。

近隣の行事に盛り上がった話題提供に一役買った著書はともかく、白石町に薬師さんのボタモチ籠りがあるとわかった。

実は二日後の22日は「虫干し」があるという。

場は国津神社の社務所。

寺屋敷の名もあるその場で大般若経経典の虫干しをするという。

興善寺の住職を迎えて拝んでもらう。

シキビで作法もするという大般若経。

おそらく転読法要の作法であろう。

その経典を納めている籠は山伏が担ぐような道具であるらしい。

元々は神社に寺があったという。

その寺名はわからないが真言宗だったようだ。

氏子総代が参集して営まれる虫干しは、民俗行事の採録から外すことのできない「干す」テーマ。

店主は参加できないから区長に伝えておくと云ってくれた。

白石町に気になるカンジョウナワがある。

場はわかっているが、いつ架けられるのか。それを知りたかった。

勧請縄掛けは12月25日くらいに神社の門松を調えるその日にしているという。

ありがたい情報に胸が小躍りしてくる白石町に特別な言い方の方言があるという。



それ「ずる」。

物を下げる場合に使う言葉で「ずる」という。

「そこにずってくれ」と力仕事を頼まれたときは、物を持ち上げて下げる。

引きずるのではなく、持ち上げながら「ずる」のである。

近隣の村では聞いたことないと云われる「ずる」。

白石町だけの交わされる方言のようだ。

(H30. 7.20 EOS7D撮影)