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なぜ、天王星や海王星には地球の数十倍も強い磁場があるの?

2019年08月01日 | 太陽系・小惑星
水を主成分とする試料をレーザーで圧縮する実験で、水が光を強く反射する金属状態になることが確かめられました。
地球の数十倍も強い磁場がある天王星や海王星。
その磁場の源が“金属の水”に流れる電流であることを示す結果になるそうです。

なぜ水を主成分とする氷惑星に強い磁場が存在するのか?

巨大氷惑星に分類される天王星と海王星は水を主成分とする惑星で、そこに少量の炭素と窒素を含む分子(メタンやアンモニア)が混じっていると考えられています。
“ボイジャー2号”が撮影した天王星(左)と海王星(右)。大きさは地球の約4倍、質量は天王星が約15倍、海王星が約17倍ある。中央に地球があるのは大きさの比較のため。
“ボイジャー2号”が撮影した天王星(左)と海王星(右)。
大きさは地球の約4倍、質量は天王星が約15倍、海王星が約17倍ある。
中央に地球があるのは大きさの比較のため。
1980年代に天王星と海王星に相次いで到達したNASAの“ボイジャー2号”によって明らかになったのが、これらの氷惑星の内部から地球の数十倍の強さの磁場が発生していることでした。

このような強い磁場が作られるのに必要なのは、氷惑星の内部に強い電流が流れ続けること。
でも、水は電気をあまり通さない物質… 惑星内部に強い電流が流れると考えるには無理があります。
なので、氷惑星の磁場の存在は長年の謎でした。

高温高圧の状態を再現すると水が金属状態になった

今回研究を行ったのは、フランスの教育研究機関“エコール・ポリテクニーク”と岡山大学惑星物質研究所の研究グループ。
巨大氷惑星の磁場の起源を明らかにするため、高強度レーザー施設を用いて実験を行っています。
今回の実験に利用された2つの大型レーザー施設。(左)エコール・ポリテクニークの“LULI 2000”と、(右)大阪大学の“激光XII号”。
今回の実験に利用された2つの大型レーザー施設。
(左)エコール・ポリテクニークの“LULI 2000”と、(右)大阪大学の“激光XII号”。
実験で準備したのは、惑星模擬溶液の試料として、純粋な水、炭素成分を少し含む水溶液、炭素と窒素成分を少し含む水溶液の3種類。

これらの試料を容器に封入し、そこに高強度レーザーを照射するというレーザーショック圧縮手法によって、通常では極めて実現しにくい高温高圧の状態を作り出し、約300万気圧という惑星内部の実際の圧力を再現しています。

ただ、この手法によって作り出される巨大な圧力を維持できるのは、1億分の1秒ほどという非常に短い時間。
そこで研究グループでは、一瞬の間に物質の性質を詳しく調べる方法を開発し、水溶液の圧力、密度、温度及び反射率などの性質をまとめて計測しています。

実験の結果、3種類の水溶液はいずれも、光を強く反射する状態へと一瞬のうちに変化することが分かります。
このことが示しているのは、調べている物質が金属状態になったことでした。

また、試料の水溶液が炭素を含む場合、純粋な水と比べて光の反射率が顕著に高くなることも分かりました。
炭素を含む混合液体からの光の反射率のグラフ。赤外線(1064nm)と可視光線(532nm)のいずれでも、純粋な水に比べて顕著に反射率が高い。
炭素を含む混合液体からの光の反射率のグラフ。
赤外線(1064nm)と可視光線(532nm)のいずれでも、
純粋な水に比べて顕著に反射率が高い。
今回の研究成果により分かったことは、天王星や海王星内部にある磁場の源が“金属の水(金属的な流体)”に流れる電流だということ。
そこに含まれるメタンが分解してできた炭素イオンが、水の性質に影響を与えているようですよ。


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