偉大な人物の行跡を紹介するこのコーナー(そんなのあった?あるンです!)、第4回はモーゼをとりあげます。
最も有名なモーゼの像は、ローマ郊外の丘の上に立つサン・ピエトロ・イン・ヴィンコリ教会にあります。
『神のごとき』と称賛されたミケランジェロが教皇ユリウスⅡ世の墓碑として彫刻したもので、実に生気に満ちたモーゼ像です(私は実際に行って見たことがあります!箱にコインを入れると数分間照明が点くのです)。
ミケランジェロはこの像が完成したとき、その膝を叩いて『さあ語れ!』と言ったとか・・・。
※ユリウスⅡ世廟のモーゼ像(ミケランジェロ作)
で、この像をよく見ると頭に角がある!(やはり人間ではなかったのか!?)いやいやこれは誤訳によるもので本来は『輝く』とか『智慧ある』だったのが、いつからか『角のある』に変ってしまったらしい。シンデレラの靴が布からガラスに変ってしまったのと同じように・・・。
さて、カナンの地で暮らしていたヘブライ人たちはエジプトに移住させられ奴隷となっていた。
モーゼはヘブライ人の子だったが、ファラオによるヘブライ人への人口抑制政策から逃れるためナイル河に流されたところをエジプト王族に拾われ育てられたという。実母が乳母としてこの家に潜り込んでいるから、実際には『ホトトギスの托卵』みたいな謀り事だったようだ。
成長したモーゼはヘブライ人を助けようとして、誤ってエジプト人を殺してしまい逃亡、しばらく姿をくらましていたのだが『ヘブライ人を助けるためにファラオと交渉して皆でエジプトを離れるべきだ』と考えるようになる。
※ファラオと対峙するモーゼ(映画『十戒』より)
奴隷となっていたヘブライ人を解放してもらうためにファラオの前に出てハッタリで奇跡を演じてみせるが、手品の域を出ない子供騙しだったので失敗し、とうとうテロに走るようになる。ナイル河に毒を流し、生物化学兵器による無差別テロを強行したのだ(脚註1)。オウム真理教も真っ青である。
ヘブライ人によるエジプト人の子供を狙った残忍な無差別殺人まで広まったためにファラオも辟易して『もう、こいつ等追放しちゃって!』との命令が下り、モーゼはヘブライ人を連れて安住の地を求めて実に40年間砂漠を彷徨うことになるのです。
よくよく考えてみるとファラオは結果的にテロ犯罪者たちを野放しにしたワケで『やっぱ殺そう!』と追手を差し向けるが、モーゼたち一行は大潮で出現した砂州を渡ってうまうまと逃げおおせます(脚註2)。
この荒野を彷徨う40年の間に団結を固めるため十戒が考案された(らしい。キリスト教者は『神から与えられた』として著作権を放棄していますが・・・)。
裏切り者を許さない『ゲルショッカーの掟』みたいなものだと思えばいいでしょう。
※ブラック将軍(その正体は怪人ヒルカメレオン)が語るゲルショッカーの掟
ところで十戒は2種類あります。『唯一絶対の神から与えられたのなら1つではないのか?』という疑問はこの際捨象します。
詳しく見てみましょう。
【正教会・聖公会・一般のプロテスタントの十戒】
1.主が唯一の神であること
2.偶像を作ってはならないこと(偶像崇拝の禁止)
3.神の名をみだりに唱えてはならないこと
4.安息日を守ること
5.父母を敬うこと
6.殺人をしてはいけないこと(汝、殺す無かれ)
7.姦淫をしてはいけないこと
8.盗んではいけないこと
9.隣人について偽証してはいけないこと
10.隣人の財産をむさぼってはいけないこと
【カトリック教会・ルーテル教会の十戒】
わたしはあなたの主なる神である。
1.わたしのほかに神があってはならない。
2.あなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない。
3.主の日を心にとどめ、これを聖とせよ。
4.あなたの父母を敬え。
5.殺してはならない。
6.姦淫してはならない。
7.盗んではならない。
8.隣人に関して偽証してはならない。
9.隣人の妻を欲してはならない。
10.隣人の財産を欲してはならない
※石板に刻まれた正教会・聖公会・一般のプロテスタント版の十戒(イメージ)
これを見て驚くのは1から4(または3)までは信仰に関することなのです。
まず第1は『汝われ以外の神を信ずべからず』なのです。これが最優先事項です。
その理由を『エホヴァ(仮)は妬(ねた)みの神にして・・・』とこの名前の分からない神は言うのです。
名前が分からないと言ったのは、ヘブライ語の記述では子音のみで『YHWH』と記されているために読みが分からないのです。子音だけでは発音できません。みだりに名前が唱えられないよう、この神は名前を明かさないのです。
筒井康隆の『熊の木本線』のようにテキトーに母音を当てはめて何通りも試したら本当の名前に一致して神罰が当たるかもしれません。モノ好きな方は試してみるのも一興かと・・・。
で、『汝、殺す勿(なか)れ』は信仰よりも下位に置かれています。何と『安息日を守ること』よりも優先順位は低いのです。このことが実はキリスト教徒が『異教徒ならいくらでも殺してイイ』という理屈のモトになっているのです。
※エルサレム奪還のために結成された十字軍『キャッホー!異教徒は皆殺しじゃぁぁぁ!』
現代まで続く世界の争乱の原因がここにある!(と私は思います)
モーゼは荒野を40年間彷徨った後、目的地を目前にして息絶えます。享年120歳(計算が合わンが、まあイイ)。
※海原雄山ふうに叫ぶ。
実際には『こんなところは「約束の地」では、なーい!』と海原雄山のように叫んでは彷徨い続けるリーダーが亡くなったので皆ホッとしたのだろう。『もうここが約束の地でイイやーん!』と、皆で定住を決めたのだと思われる。
ここに住んだものたちはユダヤ人と名乗るようになる。その後もユダヤ人たちはバビロン捕囚になったりして故郷から遠く離れた地を彷徨い続けるのだが、フリーメーソンの力でアメリカ合衆国を動かし(←この説には定かな証拠はないが・・・)、とうとうイスラエルを建国する。理由は『そこが聖書にある「約束の地」だから』です。
※アメリカ合衆国1ドル札に印刷されたイルミナティ(フリーメイソン系秘密結社)のシンボル(・・・だという説がある)
『2000年以上前の土地所有権を主張する』というのは蛮行以外のなにものでもないが、アメリカ合衆国はこれを後押しした。
しかし、そこは残っていたヘブライ人の子孫がイスラム教に改宗して住む土地だったのです。
かくしてユダヤ人対ヘブライ人という同族の子孫同志の戦いは今も続いています。
(脚註1)十の災い
十の災いとは、①ナイル川の水を血に変える、②蛙を放つ、③ぶよを放つ、④虻を放つ、⑤家畜に疫病を流行らせる、⑥腫れ物を生じさせる、⑦雹を降らせる、⑧蝗を放つ、⑨暗闇でエジプトを覆う、⑩長子を皆殺しする、となっている。ヘブライ人たちがこれを行ったのでなければ、天変地異に乗じて様々な流言を放ち『世情不安や風評被害をエジプトにもたらした』と考えられる。
これを見て思うのは『ヨハネ黙示録』との類似です。やはり黙示録は未来の出来事に託してローマ帝国を批判したものではないかと、私は思います。黙示録の獣が持つ7つの頭とは、キリスト教を迫害した7人の皇帝を指しているのではないか、という説に賛同します。
※作物を喰い荒らす飛蝗の群れ(←⑧蝗を放つ)パール・バックの「大地」を思い出させる写真!
(脚註2)海を割るモーゼ
モーゼは海を割ったというが、私は『大潮で一時的に砂州が出現したのではないか?』と考えます。ちょうどモン・サン・ミシェルに続く砂州のように。三重県の賢島はその昔『徒歩(かち)越し島』と呼ばれていたそうです。潮が引いたとき、頭の上に衣服や荷物を載せてふんどし一丁で渡ることができたそうですが、このようにして追手から逃れたのではないかと思うのです。
※皆が抱いているイメージはこれ!・・・湖を割る大魔神(映画『大魔神怒る』より)