しろみ茂平の話

郷土史を中心にした雑記

ケンペル「江戸参府旅行日記」第四章 駅舎・旅館・料理屋・茶店

2021年10月01日 | 「江戸参府紀行」ケンペル&シーボルト
ケンペル「江戸参府旅行日記」   訳者・斎藤信  東洋文庫  昭和52年発行
1691年(元禄4)


第四章 駅舎・旅館・料理屋・茶店

街道に沿った町や村には、旅行者のために領主が設けた駅舎があり、
そこでたくさんの馬や荷物運搬人が配達人など、いつでも一定の賃金で雇うことができる。

九州の小さな街道では旅館としての家屋でなく、厩舎として建てられたもので、馬をとりかえる際に街道をふさがないようにするためである。

街道筋には旅館がありかなり整っている。
毎年江戸に行き来する大名たちが宿をとる「本陣」は、すべて整った設備をもっている。


(矢掛宿・本陣)




ほかの立派な家屋と同様に一階建てであるが、もしもう一階あっても二階は頭がつかえそうで、そのうえ結構なにおいが漂っている。
奥行きの長さは時には40間もあり、後ろに坪庭がある。



(矢掛宿・本陣)

調理場には煙突がなく、煙りだしの穴があいているだけだから、よく煙が部屋中に立ち込める。


便所は後屋の脇にあり、二つの戸口を通って入るように造ってある。
中に入ると、清潔な床の上にござが敷いてあり、素足が嫌な人はイグサか藁で作った草履が置いてある。
用を足すやり方はアジアの流儀で、つまり、しゃがんで床の狭い穴の中にする。
もみ殻か刻んだ藁がいっぱい入っている一個の長方形の桶が外から差し込んであって、それで悪臭はたちまち吸収されてしまう。
便所の近くには手水鉢があり、すぐに手を洗うことができる。それは凸凹の石で、竹の柄杓が備えてある。


(矢掛宿・本陣)


浴室は通常小さに庭の一番奥の方に続き、ヒノキ材で建てられている。
その中には一つの風呂、すなわち蒸気の箱があるか、湯の入った浴槽があるかのどちらかだった。
旅行中、汗を流したり手足の疲れをいやすため、毎日入浴する。
日本人の着物は簡単に脱げる。
帯を解いてちょっと体を動かせば、身につけているものはみんな落ちて、丸裸となる。


・・・・・・


私は、数え切れない低級の旅館・小料理屋・居酒屋・食べ物や甘い物を売る茶店について記述しよう。
これらのものは、旅する街道沿いの森や谷間などにもあって、疲れた徒歩の旅行者や身分の低い人たちは、わずかな銭を払って、暖かい軽い食事をとり茶や酒を飲むことができる。
貧しい人たちがやっているので、これらの店は貧弱で粗末であるが、
それでも通り過ぎる旅人といつも惹き付けるに足りるものである。
流れ落ちる小川とか、花をつけた小枝を活ける。
また、きれいに着飾った2.3人の若い娘がいて、道行く人に呼び掛け
、愛嬌をふりまきながら客に差し出す。


(丸子)







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