「結婚やめてカメラマンになったんでしょ」
『当時知り合いだったラジオのディレクターから、今までの経験、人脈など無駄にするなんてもったいないからカメラマンなんかになるんじゃないと言われたし、バーのマスターにも転職なんて今更無理だと言われたが、僕自身、大した仕事も出来なかったし、すでにテンション落ちちゃっていたので、どーでもよかった』
「ふーん」
『あの頃って、今と違って転職なんかする人間少なかったのよ』
「そーなんだ!」
『アルコールが入るとカメラマンになると回りにいる人に言っていたよーな気がする』
「回りにいた人達も迷惑だったんじゃないの」
『結婚止めて、半年ぐらい荒れていたんだけど、子供の頃から知ってる近所のKちゃんから(パリに牡蠣食べに行こうよ)と誘われ、1月2日に成田から韓国、アンカレッジ経由でパリへ』
「なんかカッコいいじゃん」
『パリとエペルネと言う所で、写真ばかり撮っていたけど、あのまま向こうに住んじゃえばよかったと後になって思った』
「そーね!」
『結局帰国したけど、会社の対応めちゃひどく頭に来てすぐ辞表。知り合いのカメラマンの事務所に2ヶ月いたけど,そこもすぐ辞め、その後、現場で撮り方覚えていった』
「やるっきゃなかった」
『そー、とにかくカメラに関して何にも知らなかったが、失敗だけはするなとキツく言われていたので、色んな方法で撮影していた。後、カメラ壊したら、なにも出来ないぞと厳しく言われた。だから今でも変な所にカメラ置いている人見ると注意する』
「机からストラップが垂れ下がっているとか」
『うん、ストラップに何か引っかかって床に落ちたらカメラおじゃんだよ』
「今のカメラはヤワだもんね」
『床がコンクリートだったりしたら、一巻の終わりだね』
「あなたの持ってるキャノンのF−1のペンタプリズム、凹んでいるわよね」
『あれはたぶんアマチュア時代に何処かにぶつけたんだと思う』
「金属だから凹みで済んだけどプラスティックだったら割れていたわ」
『おっしゃるとーり!』
「最近の機材は軽いわね」
『三脚なんかもめちゃ軽い。僕が持ってるGITZOやHUSKYなんて重たくて車がなかったら、ちと辛い』
「ストロボもね」
『僕のはスタジオ用のストロボだから、めちゃ重い。東京時代にストロボセット、カメラバッグ、三脚、キャリアーにくくり付けて運んでいたけど、計ってみたら30キロあった』
「ホテルオークラでキャリアー突然壊れちゃったんでしょ」
『そー、ガキっと音して使えなくなった』
「車まで運ぶの大変だったでしょ」
『みんなが手伝ってくれたから大丈夫!』
「最近どんどん機材も軽くなり、値段も安くなっていい時代になったんじゃないの」
『そーだね、でもいくら良い機材を持っていてもセンスが悪けりゃ意味がない』
「ホント、そーよね」