物部の森

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日記風に書いてます。

【書籍】街場のメディア論

2011年03月16日 | Weblog
 『街場のメディア論』(内田樹著、光文社新書)を読む。

 神戸女子学院大学で2007年に行われた、「メディアと知」という題名の講義をもとに書かれている。
 前半はタイトルどおりメディア論。テレビ視聴率の低下、新聞部数の激減、出版の不調など、マスメディアにおける未曾有の凋落の原因はどこにあるのか、批判的に言及する。そしてそれは、とりもなおさず、現代日本人の知性の不調と同期していると厳しい言葉を放つ。
 後半の読書論のところで、電子書籍について述べているが、そこに一番興味を引かれる。
 筆者は、電子書籍について、経済性や、アクセシビリティ、ポータビリティといった観点で、一定の評価をしているが、弱点は「書棚が形成できない」ところだと言う。書棚は「理想我」とのことだが、私なりの言い方をすれば、書棚とその“人となり”とはニアリーイコールである。私が電子書籍に乗り出せないのは、書棚によって人格を表出させることができないからである。
 既出の電子書籍に関する議論では、誰一人として「書棚の効用」の観点から意見を述べる人はいなかった(と思われる)。そこを鋭く突くウチダ先生。その着眼点に思わず膝を打つ。
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