「東京新聞」社説 2022年1月28日
国が示した被爆者認定の新指針に基づく予算案が、国会で審議されている。新指針は認定の枠を広げたものの、がんなど十一疾病の発症を要件として残し、昨夏の広島高裁判決より後退している。長崎にも適用されない。同じ原爆被害者でありながら、救済のあり方で分断が生じないか。引き続き、新指針の問題点もしっかり議論してほしい。
高裁判決は、広島への原爆投下時に、援護区域外にいた原告八十四人全員を被爆者と認めた。「病気にかかったかを問わず、黒い雨に遭っていれば被爆者だ」という内容で、国は上告を断念し、原告勝訴が確定した。
現行の指針は、国が線引きした援護区域の外の人は被爆者と認定してこなかった。しかし、新指針では、判決を受けて八十四人と同様に、線引きにこだわらず、区域外にいても「黒い雨に遭ったことが否定できない場合」を含めた。
これで、認定が大幅に広がった。国は、最大で一万一千人を救済できる七十八億円の予算案を組んだ。半面、十一疾病の発症については「(認定要件から外した判決は)これまでの被爆者援護制度の考え方と相いれない」として、新指針でも維持した。
広島県と広島市は、疾病条項が新指針で撤廃されなかったことに「判決が否定したのに」と反発した。だが、「四月からの制度運用が難しくなる」(湯崎英彦知事)、「賛成しないが、反対しない」(松井一実市長)と苦渋をにじませながら受け入れた。
司法の判断を反映させない国の手法には到底納得できないが、高齢化が進む被爆者の援護は早期に始めねばならない、という現実に、やむなく妥協したということだろう。とはいえ、原告団や被爆者団体から「地理的線引きに代わる新たな線引きだ」などと激しい批判がわき起こった。判決で喜び、新指針で泣いた人々は少なくないとみられる。
「黒い雨」に遭ったことを争点とする訴訟がない長崎でも、被爆者認定の拡大を求める訴訟は係争中。すでに原告敗訴が確定した訴訟もある。長崎県と長崎市の調査で、黒い雨などを浴びたという証言が二千以上あるという。この数字は重い。長崎は新指針の対象外だが、広島出身の岸田文雄首相は「被爆地の分断だ」と訴える長崎の声を真摯(しんし)に聞かねばならない。
ここにも国の「超法規」司法無視の姿勢が現れている。国民の命と暮らしに背をむけ続けている。
いろいろと書きたいことはあったのですが、忙しさにかまけて遅くなりました。
「かんじき」は小さい頃、私も履いていました。
子供用に、父か祖父が作ってくれたのだったかな?
政治にはもう信頼がなくなりました。
司法は独立せずに忖度しているようですね。
コロナに対するしっかりした指針を出してくれないかと思います。