モリモリキッズ

信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

冠着山(姨捨山)ハイキングと荒砥城跡(妻女山里山通信)

2014-09-08 | アウトドア・ネイチャーフォト
 週末に用事のついでに冠着山(姨捨山)に登ってきました。姨捨山については、数々の伝説や歴史があるのですが、それを書き始めると、膨大な量になってしまうので、興味のある方は是非Wikipediaの姨捨山を読んでください。なかなかよく出来ていると思います。冠着山への登山道は、千曲市の坊城平からの1時間コース、筑北村坂井の鳥居平からの30分コース、千曲市戸倉上山田温泉の大正橋の佐良志奈神社から尾根伝いに登る3時間コース、本来の表参道の久露滝コース、大林山や八頭山からの縦走コースなど色々ありますが、今回は最も楽ちんな鳥居平からの30分コースです。

 国道403号線を姨捨駅の上へ登って行くと、知る人ぞ知る「アラレちゃんコーナー」があります。そのすぐ上から左の大池方面へ向かい、一本松峠を経て鳥居平の登山口へ行く方法と、403号線を聖湖まで登り、湖の先で左折してスラーイダー方面へ。スライダーには行かず、右の498号線をひたすら辿ると、一本松峠を経て鳥居平へ。今回は後のルートで行きました。鳥居平で登山靴に履き替えていると、新潟ナンバーのSUVが。秋の団体登山の下見だそうです。
 ここから山頂までは、わずか1100mの距離。登山というよりもう散歩です。林道を歩き始めると、ミンミンゼミの鳴き声のシャワーを浴びました。まだ夏かなと思いながら登って行くと、サラシナショウマ(晒菜升麻)とヤマトリカブト(山鳥兜)の群生地がありました。やはりもう秋です。

 マムシグサ(蝮草)の実。いずれ真っ赤になりますが、毒草で、誤って食べると口中がただれます。漢方薬に用いられる生薬のひとつでもあります。アザミが咲いていました。タイアザミでしょうか。アカソの葉に留まるヒトリガ。翅を広げると下から鮮やかなオレンジ色の後翅と胴体が現れます。幼虫は、山桑やニワトコの葉を食べます。ヒトリガは、一人でいる蛾ではなく、火取蛾、燈取蛾、灯取蛾、火盗蛾、灯盗蛾と記される光に集まる蛾です。

 20分ほどで山頂の神社広場に出ると、北の斜面にはサラシナショウマの群生地があり風に揺れていました。眼下には姨捨のサービスエリアと棚田が見えます。シシウド(猪独活)の残花。高さは2mぐらいあります。真っ白に咲く花は、高原の線香花火。色々な昆虫が吸蜜に訪れます。それよりずっと小さいシラネセンキュウ(白根川芎)の花にはアリが吸蜜に訪れていました。

 曇っていて、北アルプスなどは見られませんでしたが、眼下には姨捨SAとスイッチバックで有名なJR東日本・篠ノ井線の姨捨駅(左上にある駅は森の陰で見えていません)と棚田。姨捨駅からの風景は、日本三大車窓のひとつです。特に夕暮れの景色と夜景は特筆ものです。星の観察にも最適な場所です。現在は無人駅なので、ホームの展望台まで無料で行かれます。姨捨で画像検索すると、美しい夜景の写真がたくさんヒットします。おすすめのスポットです。その下の長楽寺には、姥岩があります。

 前夜に雨が降ったので、蜘蛛の巣には水滴がたくさんついていました。山頂にたくさん見られたゲンノショウコ(現の証拠)。下痢止めや胃薬に用いられる有名な生薬のひとつです。秋の種を飛散させた後の形が、神輿の飾りの様に見えることから、ミコシグサとも言われます。最後はヨメナ(嫁菜)。小さな甲虫が吸蜜していました。山頂にはキアゲハ、ミドリヒョウモン、ヤマトシジミなど蝶もたくさんいたのですが、時間の制約もあり残念ながら撮影できませんでした。

 冠着山山頂から南の展望。尾根伝いに八頭山、大林山と続きます。大林山は地味な山ですが、ほぼ360度の大展望が魅力です。晴れていれば、蓼科山や八ヶ岳、美ヶ原も見えます。

 帰路についてアブラチャン(油瀝青)の木が多いことに気づきました。昔、果実や樹皮の油を灯油にしたそうです。実は、傷をつけるとメントールの様な爽やかな香りがします。これでリキュールも作れるとか。枝を折ると、白檀の様な香りがします。登山道にヤマボウシ(山法師、山帽子)の紅い実がいくつも落ちていました。甘くて美味しい実は、熊や蜂の大好物。ひとつ食べてみました。これのジャムや果実酒も美味しそうです。
 雨粒を溜めたキツリフネ(黄釣舟)。

 マルバハギ(丸葉萩)の残花。萩は秋の七草ですが、実際は信州では夏の花ですね。万葉集では一番多く詠まれた花なんですが、萩の花というのは、女性生殖器の隠喩であり、よく対に出る鹿は、男性生殖器の隠喩なんだそうです。どおりで艶っぽい歌が多いわけです。
「をとめらに行き逢ひの早稲(わせ)を刈る時になりにけらしも萩の花咲く」万葉集 詠人知らず
 往路にオオスズメバチに付きまとわれて威嚇されて撮影できなかったコマメホコリかマメホコリの子実体です。所謂粘菌(変形菌)です。小さな甲虫が食餌におとずれています。ヤマハッカ(山薄荷)の小花。

 鳥居平に戻り、498号線を戸倉上山田温泉に下りました。その途中で、いつも通り過ぎていた荒砥城跡に立ち寄りました。入場者は私だけでした。ゆっくりと砦を見ていると、施設の管理をしている男性が登ってきました。なかなか話し好きの面白い方で、色んなことを話しました。予算が削られて管理がままならないこと。千曲市の松枯れの空中散布ほど無駄で危険なものはないこともご存知でした。石垣の上にアオダイショウの脱皮した皮がありました。荒砥城跡は、大河ドラマのロケ地にもなったので、訪れる人も多いそうです。この秋にはイノシシ鍋や甲冑を着てのイベントもあるそうです。以前は弓矢を作る教室も開いていたそうです。子供達はやりたがるのだそうですが、親が道具を全く使えないので、やがて中止になったそうです。

 少し下って、善光寺大本願別院、男女和合の神、御神体が男女の性器の澳津神社。今は廃墟となってしまった日本歴史館。そこから眼下に戸倉上山田温泉と千曲川を見下ろして。向こうには村上義清の葛尾城跡と五里ヶ峯。遅い昼を、信州小麦ラーメンの亀屋さんで。さらしなラーメンと餃子を頂きました。どうも信州は、私には塩辛いラーメンが多いのですが、ここのはピッタリでした。限定メニューの味噌カレーつけ麺を隣の方が食べていましたが、これはいずれ是非。幻の伊賀築後オレゴンのつけ麺も。伊賀築後オレゴンは、友人が作っているので、是非亀屋さんに提供してもらいたいですね。それと信州では、うかつに大盛りを頼んではいけません。普通盛りが既に尋常ではない量の店が普通にあるからです。量をたくさん供することが、何よりの御持て成しだった名残でしょう。

★冠着山の鳴海新道を鳴海さん達と共に登った時のスライドショーです。カタクリが綺麗でした。ぜひご覧ください。そして、登って見てください。登山後は、善光寺精進落としの湯・戸倉上山田温泉で疲れを癒してください。ぼこ抱岩のぼこは、信州の方言で赤ん坊のこと。大岩が赤ん坊を抱いているように見えたらしいのいですが、その赤ん坊は善光寺地震の時に落ちてしまったそうです。現在はロッククライミングの名所になっています。


◉追記
冠着山の鳴海新道も、拙書『信州の里山トレッキング東北信編』川辺書林にて紹介しています。鳴海さんの写真も。カラー668枚の写真と私自身が国土地理院の地形図を加工したコース地図も分かりやすいと評判です。信濃毎日新聞の記事と書評に次いで新潮社『SINRA』の本のコーナーでも高い評価を頂きました。平安堂やAmazon等でお求めください。
 
にほんブログ村 写真ブログへ にほんブログ村 写真ブログ ネイチャーフォトへ にほんブログ村 アウトドアブログへ にほんブログ村 アウトドアブログ ハイキングへ にほんブログ村 歴史ブログへ にほんブログ村 歴史ブログ 日本史へ

必見!◆新農薬ネオニコチノイドが脅かすミツバチ・生態系・人間:JEPA(pdf)ネオニコチノイド系農薬は、松枯れ病だけでなく、水田の除草剤やカメムシの除虫、空き地の除草剤や家庭用殺虫剤に使われていますが、元はベトナム戦争の化学兵器の枯葉剤と同様で(代表的なのがラウンドアップ:グリホサート剤)、脳の発達障害、多動性障害(ADHD)を引き起こす強力な神経毒の『農薬』ではなく、『農毒』です。

★妻女山山系の自然については、【MORI MORI KIDS Nature Photograph Gallery】をご覧ください。キノコ、変形菌(粘菌)、コケ、花、昆虫などのスーパーマクロ写真。滝、巨樹、森の写真、森の動物、特殊な技法で作るパノラマ写真など。蝶の写真はこちらにたくさんあります。

★ネイチャーフォトのスライドショーは、【Youtube-saijouzan】をご覧ください。粘菌やオオムラサキ、ニホンカモシカのスライドショー、トレッキングのスライドショーがご覧頂けます。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 信州の伊那谷と木曽谷散策。... | トップ | 安藤(歌川)広重が江戸時代... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

アウトドア・ネイチャーフォト」カテゴリの最新記事