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信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

篠山と角間猪平ふれあいの森へ。長野市民もほとんど知らない穴場です(妻女山里山通信)

2019-06-07 | アウトドア・ネイチャーフォト
 先日、妻女山奥の陣場平へ帰化植物の除去をした帰りに、実山椒と山蕗を採ろうと下ると、旧知のS夫妻が大量の山蕗を採っていました。なんでも伽羅蕗を待っている人が10人ぐらいいるそうです。作り方は古典的なもので、水を一切使わず砂糖と醤油で2週間かけて煮詰めていくというもの。大変ですね。
 世間話をしながら採取。すると猪平(いのたいら)という四阿のある綺麗な公園が深い山の中にあるけど、人に出会ったことがないという不思議なところなのと。帰って調べてみると、長野市南部の篠山(しのやま)と分かりました。6日は暑くなるそうなので、避暑を兼ねて行ってみました。

(左)長野市篠ノ井塩崎の長谷寺(奈良長谷寺の開基より百年前に創建されたと伝えられ、奈良・鎌倉と並び「日本三所長谷観音」と称される)から山道を登っていきます。ほぼ全面舗装ですが、「ポツンと一軒家」に出てくるような細い道です。危険すぎて右が切れ落ちているところでは撮影できませんでした。軽自動車なら余裕でしょうけど、ガードレールがないので脇見運転は厳禁です。(右)ウィーゴカントリー倶楽部の南側を巻いて林道を登っていくと、南側が上になっているアバウトな絵地図が。残念ながら長野市のこの手の看板はレベルが低いです。妻女山展望台の看板など最悪です。太陽光の影響も考慮していないので数年でボロボロです。しかも色々間違っているし、実際の地形と全く違うし。観光客の評判も悪い。私はエンバイロメント・グラフィックスとかインフォメーション・デザインのデザインやアートディレクションもやっていたので、オンブズマンとして参加させて欲しいです。観光立県なのですから、もっとレベルを上げて欲しいものです。

(左)最後は未舗装の道を登ります。(右)けっこう広い駐車場。右下にもあって20台ぐらいは余裕で止められます。山林作業の邪魔になるので、林道上には止めないでの標識。拙書でもそのことを記していますが、大事なことなんです。最近は、ハーベスターなどの高性能の林業機械も入りますから。

(左)フタリシズカ(二人静)。(右)林道を登るとすぐに「市民ふれあいの森公園」。四阿とベンチやテーブルがたくさんあります。下草も綺麗に刈られていてよく手入れがされていますが、人影がまったくありません。善光寺平の多くの場所から見える大きな里山なんですが、篠山という名前を知らない人がほとんどでしょう。高句麗の王族、前部秋足(ぜんぶのあきたり)が延暦18年(799)に篠井性を下賜(かし)されており、篠ノ井の地名の元となったのですが、篠山の語源でもあるのでしょう。この時、多くの高句麗の豪族が帰化しています。高句麗人はツングース系で石の文化を持つ民族で、長野市には高句麗式積石塚古墳として大室古墳群が、多くが破壊されましたが妻女山にもあります。陣場平奥には堂平積石塚古墳群があります。日本に馬産を伝えた人々といわれています。

 四阿から東方の長め。左に延びる戸神山脈の先端は、私がホームフィールドとする妻女山山系です。梅雨が近づいて空気が湿っているためか風景が霞んでいます。麓は暑そうですが、ここは下から吹き上げる風が快適です。ツツジの名所だそうですが、ほぼ咲き終わっていました。

 眼下は屋代の市街地。遠くに先日登った大松山。手前の御姫山と大嵐山は、地味で静かな戸神山脈の里山ですが、拙書にも載せています。トレランの人がよく走る尾根です。御姫山と大嵐山は、千葉から来た80歳の男性が、拙書の山で登ったことがない山が二つだけあると言った山です。

 右へ目を向けると鏡台山。双耳峰の真ん中に満月が昇ると鏡台に見えるといいます。姨捨の棚田から見た鏡台山に登る月を描いた歌川広重の「田毎の月」は有名です。あら!鏡台山の北峰と南峰の表示が、左右逆です。困ったもんです。
歌川(安藤)広重「信濃 更科 田毎月 鏡台山」でキノコ狩り。クリタケとナメコを300本ぐらい採取。妻女山の秋模様(妻女山里山通信)

 更に右へ目をやると坂城、上田方面。眼下に千曲川。村上義清の葛尾城跡の左上は五里ヶ峯。前述の鏡台山と五里ヶ峯を経由して、長野県歴史博物館を起点終点として、戸神山脈と五一山脈を結ぶ周回コースは、トレランの人に人気です。拙書の、妻女山と鏡台山と五里ヶ峯の地図を3枚つなげると、コースの全体が分かります。

(左)公園にはツツジ科のシャクナゲが。他に海を渡る蝶、アサギマダラが大好きなフジバカマや、オオルリシジミの食草のクララなどが見られました。(右)下草や笹が綺麗に刈られた公園の森。向こうには池もあります。この一帯は、干害保安林です。埴科、更科や小県は、瀬戸内と同じくらい雨の少ないところなので、溜池がたくさんあります。

(左)モクレン科のホウノキ。蓮に似た白い花は日本の樹木で一番大きく、実は赤いパイナップルの様で、南洋の香りがします。(右)太い白樺の森があったり。篠山への登山道入り口を見落として歩いた林道の先には、ドイツトウヒの森。偶然にワラビの群生地を見つけて採りました。

(左)戻って篠山への登山道を発見。(右)階段が続きますが山頂はすぐそこ。

(左)約5分で山頂へ。907.7mです。(右)笹が刈り払われて三角点があります。眺望はほとんどありません。ここから西へ300mほど行くと、915mの高圧線鉄塔のあるピークがあるのですが。まあいいでしょう。下って四阿でお昼にしました。フォッカッチャにレタス、スライスチーズ、ビアソーセージ、オリーブ油とタルタルソースを挟んで。美味しいけどなにか足りないなと。トマトを入れ忘れました。
 帰りはあの狭い道を下るのは嫌なので、ゴルフ場の正門へ向かって北の信更町へ下り70号線を稲荷山へ。篠山へは、こちらのルートがおすすめです。今回は、長谷寺に参拝できなかったのですが、いずれ。特に1802年に建てられた鐘楼の見事な木彫が誰の制作か気になります。諏訪立川流か大隅流か、他の流派か。ここから塩崎城跡や小坂山経由で登るコースもあります。
 さて、開けて7日は朝から雨模様。信州も梅雨に入った様です。

『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。郷土史研究家でもあるので、その山の歴史も記しています。地形図掲載は本書だけ。立ち寄り温泉も。詳細は、『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。でも、できれば地元の書店さんを元気にして欲しいです。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。分かりやすいと評判のガイドマップも自作です。『真田丸』関連の山もたくさん収録。

本の概要は、こちらの記事を御覧ください

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