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信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

ショウジョウが袴姿で酔い潰れる北信濃の春(妻女山里山通信)

2010-04-20 | アウトドア・ネイチャーフォト
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 ショウジョウ(猩々)は、中国最古の空想的地理書『山海経』(せんがいきょう)に登場する龍や麒麟と同様の想像上の動物です。オランウータンがモデルともいわれていますが、能では海中に住むという設定です。また、ショウジョウの血の色といわれる猩々緋は、黄みがかった紅色で、能の装束では足袋以外はすべてこの色を使うようです。
 猩々のついた動植物は色々あるのですが、最も一般的なのは猩々蠅(ショウジョウバエ)でしょう。ショウジョウトンボ(猩猩蜻蛉)も有名。意外なところではポインセチアを漢字で書くと猩猩木となります。

 まだ芽吹きの浅い北信濃の里山を歩くと(妻女山近くの里山)、猩々緋というよりは、マゼンタピンク(マジェンタ:magenta)のショウジョウバカマ(猩々袴)が見られます。ユリ科ショウジョウバカマ属の多年草で、湿った場所を好み、里から高山の湿地帯まで広く分布する植物です。マゼンタは、その染料が発見されたイタリアの地名らしいのですが、なぜ猩々緋ではないのに猩々袴というのか不思議です。マゼンタをひと言で表現する日本語がなかったのでしょうか。猩々緋は黄みがかっていますが、マゼンタは青みがかっています。マゼンタの和名はないのですが、絵の具では紅梅とつけられているものもあり、猩々緋とは別の色です。

 ショウジョウバカマの命名は、花を猩々の髪の毛に、重なり合う根生葉を袴に見立てたらしいのですが。非常に想像力が豊かな命名だと思います。この命名は、正確な色よりもその花と葉の形からの想像からきているのでしょう。そう思って花を見ると猿のように見えないこともない? または、冬季に霜に当たった袴に見立てた葉がアントシアニンによって紅色になることから、猩々色の袴ということでの命名という説もあるそうです。

 上杉謙信が羽織っていたという猩々緋の陣羽織は、コチニール(サボテンにつく貝殻虫)で染めたものといわれていますが、戦国の武将達はこのアドレナリンを噴出させるような猩々緋の色が非常に好きだったようです。関ヶ原で寝返ったことで有名な小早川秀秋の「猩々緋羅紗地違い鎌模様陣羽織」(東京国立博物館所蔵)は、とてつもなく派手な陣羽織。さぞや戦場で目立ったことでしょう。この緋色はケルメスという動物性染料で染められたものだそうで、他には辰砂(しんしゃ:丹砂・水銀朱)という鉱物で染めたものもあるそうです。武田山縣隊の赤備えなどは、この辰砂だとか。それぞれの色の違いは染め方や布など条件によっても変わるため、見ただけでは染料の種類を判別できません。

「猩々の 酔い潰れたる 緋花哉」
 この春は幾度となく突風が吹き荒れ、例年になく倒木や落石が頻発しています。満開の貝母(バイモ)もあらかた倒れてしまいました。突風にあおられたショウジョウバカマも、酔い潰れたように地面に倒れていました。 林風



★ネイチャーフォトは、【MORI MORI KIDS Nature Photograph Gallery】をご覧ください。キノコ、変形菌(粘菌)、コケ、花、昆虫などのスーパーマクロ写真。滝、巨樹、森の写真、森の動物、特殊な技法で作るパノラマ写真など。

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