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信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

ウラベニホテイシメジとクサウラベニタケ(妻女山里山通信)

2010-10-18 | アウトドア・ネイチャーフォト
 長野県は、毒キノコ食中毒注意報を発令しました。キノコの判別依頼が去年の10倍になっているそうです。ニガクリタケ、ツキヨタケなどの事件が起きましたが、今年大豊作のウラベニホテイシメジと毒のクサウラベニタケの見分け方は、プロや経験者でも迷う事があるほど難しいものです。直接的には死には至らないものの、胃腸障害を引き起こす毒キノコで、激しい嘔吐、腹痛、下痢が起きます。軽症の場合もあるので、実際は報告されているよりもずっと多く中毒事故が起きていると思われます。

 掲載の写真は、そのウラベニホテイシメジとクサウラベニタケですが、この写真を見ても分かる通り、判別は非常に困難です。また、見分け方として図鑑やサイトに載っている内容も、必ずしもそうでない場合があり、鵜呑みにはできません。同じ場所に生えていることが多いので同定は慎重に確実に行わなければなりません。生えている場所や状況、変色があるので、キノコは持ち帰って判別ではなく現地で同定が基本です。今回も、途中で何本ものウラベニホテイシメジが放ってありました。同定できずに放ったのでしょう。中に一本クサウラベニタケもありました。分からないキノコは採らないことです。

 キノコは、標高800m以上1500m位までがよく採れます。理由は、朝晩霧に包まれることが多いからです。もちろん低山でも採れますが、乾き易いためポイントが限られ、いわゆるシロと出るタイミングを知らないと、まず一本も採れません。それから、月の輪熊との遭遇にも気をつけなければいけません。私も三度ほど出逢っています。

●同定について
 ウラベニホテイシメジは、左上の傘の写真が典型的なものです。放射状の霜降り模様に指で押したような斑紋があれば、間違いありません。時間が経つと傘に艶が出て来ます。しかし、この丸い斑紋はすべてのウラベニホテイシメジにあるわけではありません。むしろない場合の方が多いと思います。時間が経てば消えて艶が出ます。クサウラは、霜降りではなく放射状の絹目模様で艶があります。色は、ウラベニが黄褐色に対し、クサウラはやや赤褐色ですが、これも確実ではありません。黄褐色のクサウラベニタケもあります。だから難しい。
 傘の裏は、いずれも初めは白ですが、成熟して胞子を飛ばす様になると薄桃色から灰桃色、茶褐色へと変化します。裏が茶褐色になったものは老菌なので食べられません。
 ウラベニホテイシメジの軸は、幼菌でも太くがっしりしています。クサウラは細くもろいのですが、まれに太いものもあります。ウラベニも稀に細いものがあります。私は軸の細いウラベニは、同定できても万が一を考えて採りません。ウラベニは中実、クサウラは中空と書いてあるものが多いのですが、ウラベニでも大きくなると下方が中空になります。クサウラでも中実かなと思えるものがあり、これも決め手にはなりません。また、毒のイッポンシメジは、軸が太くウラベニホテイシメジとそっくりです。傘は放射状の絹目模様で艶があります。傘はやや灰褐色。
 ウラベニホテイシメジの軸は、ほとんどの場合枯れ葉からさらにのびて地中にまで達しており、非常に長い。それに対し、クサウラベニタケの軸は写真の様に枯葉の部分までなので短いのが特徴。ただ枯れ葉の部分がないとウラベニも軸が短いものも。しかし、よく見ると土の中から出ているのでクサウラと区別ができます。
 後は臭いです。これは同時に嗅ぎ比べてみるとよくわかります。クサウラベニタケとイッポンシメジは、なんとも嫌な臭いがします。この嫌な臭いは、ある種の毒キノコ特有の臭いなので、覚えておくと大変有効ですが、こればかりは経験がものをいいます。ウラベニホテイシメジもちょっと嫌な刺激臭がありますが、塩漬けにすると抜けます。
 プロでも迷う理由は、クサウラベニタケに似たウラベニホテイシメジはあまりないのですが、ウラベニホテイシメジに似たクサウラベニタケがあるからなのです。どうやら地域による変異が大きいようなのです。また、食菌のウラベニホテイシメジは苦く、毒のクサウラベニタケは苦くないというのも同定をややこしくしています。さらに、信州ではウラベニホテイシメジをイッポンカンコウといいますが、イッポンシメジという場合もあるので注意が必要です。いずれもイッポンシメジ科ですが、一本で出るわけではなく株でも出ます。迷ったら採らない食べないこと。保健所に持ち込んで鑑定してもらうことです。初心者が図鑑で同定するのは、もっとも危険な行為です。
絶対に当たらない方策は、ウラベニと同定できても、軸が細く短いものは絶対に採らないこと。キノコ狩りの達人は皆そう言います。

★見分け方が分かったでしょうか。 では、「ウラベニホテイシメジとクサウラベニタケの見分けクイズ!!」に挑戦してみてください。


●食べ方
 ウラベニホテイシメジは、特有の苦みがあります。そのため、鍋にしたけれど苦くて不味いとか、食べられなかったとか、好きではないという声を聞きます。しかし、食べ方を知っている人は、ホンシメジより美味いという人もいます。
 基本は塩漬けにすることです。塩漬けにすると苦みが和らぎ、余計な水分が抜けて旨味が凝縮します。浅漬けならそのまま、塩が多めなら塩抜きして使います。おすすめは、バター炒め。中華風に牡蠣ソース炒めや鮑ソース炒め。天ぷらも美味。秋なす、鶏肉、厚揚げなどと煮物にも。おろし醤油もさっぱりして美味しい。秋ナスと味噌汁もおすすめ。煮込みうどんも大好きです。
 生の場合は新鮮なうちに塩、酒をふってホイル焼き。特有の苦みとシャキシャキした歯応えは、日本酒にぴったりと合います。
 今年のウラベニホテイシメジのシーズンは、もう終わりです。秋の深まりともにキノコも晩秋のキノコへと移っていきます。

 以前は上記の方法でしたが、3.11福島第一原発事故以降は、除染をしています。
まず、やや濃いめの塩水に2~3時間浸けます。泥やゴミを除去した後、茹でこぼします。その後水分を切ってタッパーかジップロックに入れ薄塩をして保存します。かなり水分が出てきますが、これは捨てます。食べるときは水洗いして調理します。濃い塩漬けの場合は塩抜きしてから。
 塩水につける茹でこぼすで、7~9割の放射性物質を取り除く事ができますが、高汚染地のものは食べるべきではありません。


 こちらの記事もお読みください。ウラベニホテイシメジの軸が長いのが分かります。ただ、落ち葉の厚さが薄いと、軸も短くなります。
信州は、ウラベニホテイシメジの季節。菌根菌なので除染を念入りに(妻女山里山通信)

 クリタケと死亡例もある猛毒のニガクリタケの判別も見た目だけでは危険です。栗色のニガクリタケもあれば、黄色っぽいクリタケもあるからです。最も確実で簡単な判別法は、傘を噛んでみることです。クリタケは無味ですが、ニガクリタケはすぐに吐き出さずにはいられないほどの嫌な苦味があります。隣合わせで生えていることもあるので、同定は慎重に。

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■【信州の里山】キノコの汚染と除染について
 菌根性のキノコと腐性性のキノコに分けて解説しています。文章が長くて読みきれないときは、ポーズボタンをクリックしてください。文字が小さい時はフルスクリーンで。



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